アカデミーは、本当に必要か〔前編〕【加部究】

2011年3月23日 14時32分

■J開幕時に義務づけられた下部組織の創設
Ｊリーグは開幕時点で、参加全クラブに下部組織（アカデミー）の創設を義務づけた。成果は如実に現われている。昨年は宇佐美貴史（Ｇ大阪）小野裕二（横浜）宮吉拓実（京都）ら高校年代の選手たちが、次々にプロの舞台で活躍した。

だが一方でＪクラブは38チームまで膨れ上がり、読売クラブ時代から育成に力を入れてきた東京Ｖなどと、後発のクラブではあまりに大きな落差が生まれている。昨年のＪクラブユース選手権を振り返ると、37チーム中３チームは不参加で、グループリーグでも勝ち点０のチームが４つもあった。

■勝ち点ゼロ、得失点差マイナス30
もちろん弱くても、クラブが育成に投資するだけの十分な体力があるなら問題ない。またこうしたＪクラブが存在する都道府県が発展途上なら、地域にとってアカデミーは非常に有意義なものになる。だが例えば、勝ち点０で６試合の総得失点差が「－30」だった熊本県には、大津やルーテル学院など全国でも有数の名門高校が存在する。それぞれ勝ち点１に終わった草津や栃木と同県には、前橋育英や矢板中央、佐野日大など強豪高があり、この地域でユースが高校を破る日が訪れるかどうかは疑わしい。

Ｊ２の後発クラブなどでは、アカデミーの運営費が相当な重荷になっているのに、自前のユース以上に優秀な素材を集め、伝統を築き上げている高校が近隣にある。それならクラブがこれらの高校を支援して、そこからプロを輩出する努力をした方がはるかに効率的ではないだろうか。

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■著者プロフィール
加部究

1958年生まれ。東京都出身。立教大学を卒業後、スポーツニッポンへ入社。ワールドカップを取材するため会社を3年で退職。以降、1986年メキシコワールドカップから6大会連続で取材を行っている。近著に『ワールドカップ全史』(コスミック出版)がある｡

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