フランスにおけるW杯決勝の実況中継(TF1局)で、解説のジャン=ミッシェル・ラルケ氏からは何度「これはひどい」という言葉が発せられたことだろう。オランダのラフプレーに対してだ。その証拠に、この試合でオランダに9枚のイエローカード(うち2枚はハイティンガ=109分に退場)が出た。

 しかしこれとて、決勝という晴れの舞台を壊さぬよう努めた審判の配慮が感じられ、判定が甘いとする批判が大勢を占めた。元レキップ紙の記者でカナル・プリュス局の人気コメンテーター、ピエール・メネス氏は、オランダはハーフタイムで9人になっていてもおかしくなかったと主張する。

 とくにデヨンクのシャビ・アロンソの胸部への蹴り(26分)は一発退場でも文句なし。ファン・ボメルについても、イニエスタに対する背後からのタックル(22分)をはじめ、犯した7つのファウルのうち3つはイエローカードに相当したと分析されている。

 フランスでは、オランダの“汚い”プレーが大会を通じて標的とされてきた。準々決勝のブラジル戦のあと、中継したカナル・プリュス局のスタジオには、後味の悪さに重苦しい雰囲気まで漂ったほどだ。コメンテーターのエリ・ボープ氏は、オランダのラフプレーやシミュレーションを再三にわたって見逃した西村主審への批判を繰り返し、ギィ・ルー氏は「ファン・ボメルがこのままのプレーでどこまでピッチに残っていられるか見もの」と皮肉まじりに語った。

 しかし実際には、ファン・ボメルは決勝戦の試合終了までピッチに残った。メネス氏にとっては、「サッカーで忌むべきすべての面を代表している」と毛嫌いするファン・ボメルが優勝トロフィーを掲げる場面は絶対に見たくなかったろう。それだけに83分にロッベンがGKと1対1になった場面は、「オランダの“悪”がまかり通ってW杯を制覇すれば、サッカーに対する侮辱」とまで感じ、恐怖に凍りついたという。

 レキップ紙の解説員、ディディエ・ルスタン氏も、オランダのプレースタイルを「確信犯的」と厳しく批判し、スペインの勝利によって「サッカーは辛うじて体面を保った」と胸をなでおろしている。