12日に行なわれたW杯予選6試合目の対フェロー諸島戦で1―0と辛うじて勝利をおさめたフランス。

 4勝目(1敗1引き分け)をマークしてグループ首位セルビアとの差を「5」まで縮めた(フランスは1試合消化が少ない)が、得失点差でセルビアとまだ8点の開きがあり、グループ最下位のチームを相手に最少得点しかあげられなかったことが、最後の最後で予選突破を危うくする可能性もある。

 この試合の結果を報じたフランスのメディアは、一様に相変わらずの攻撃力不足を嘆き、「退屈なゲーム」と酷評した。

 一方レイモン・ドメネク監督は試合後、中継局TF1 のインタビューに答え、「最大の目標だった3ポイントを獲得した」、「さまざまな攻撃パターンが見られた」と“戦果”を強調している。

 大量点を奪う期待が外れた原因については、「休暇明けで選手の調子がまだ上がっていない難しい時期」、「芝が十分に刈られておらず、練習のときには球足が速かったのに、試合では水気を含んで重かった」、「フェロー諸島が全員で守ってきた。このチームは予選で2点差以上で負けていない」などと“言い訳”に終始した。

 しかし各メディアは、過去5試合で1ゴールしかあげていない、選手のほとんどがアマチュアであるチームを相手に、ディフェンシブなフォーメーションで臨んだドメネク監督の選択に批判を集中させている。トゥララン(リヨン)、ラサナ・ディアラ(レアル・マドリー)という“守備専門”のMFを2枚そろえて起用したのが最大の“疑問点”だ。

 加えて選手交代も、動きのよかったマルダ(チェルシー)に替えてリベリ(バイエルン・ミュンヘン)を投入したのみ。レアル・マドリーで結果を出しているベンゼマも、成長著しいレミー(ニース)も出さずに終えた。センターで威力を発揮するアネルカ(チェルシー)も右サイドで起用され不完全燃焼。これまでドメネク監督に極力理解を示してきた評論家のピエール・メネズ氏でさえ、こうした消極策を「不可解」ともらしている。

 W杯予選の残りは4試合。アウェーで首位セルビアと対戦するほか、初戦で敗れたオーストリア、引き分けたルーマニア、今回のフェロー諸島とのホームゲーム3試合を残す。ホームとはいっても、自国のサポーターから熱烈な応援が期待できないのは、これまでの例が示している。

 今回アンリ(バルセロナ)もヴィエラ(インテル)も欠き、初めてW杯優勝(98年)経験者がゼロというチームで臨んだフランス。真の再生が実現するのは、サポーターがフランスでの試合ごとに叫びつづける「ドメネク辞任」を待つよりほかないのだろうか?