人類の技術は右肩上がりで進歩しているが、産声をあげた当初は大きな変化をもたらすと多数の人が予測できなかった革新的テクノロジーも少なくない。飛行機の発明者であるライト兄弟でさえ、最初は大きな反発と嘲笑を受けていた。

そんな革新的技術に対する的外れな酷評や、見当外れの予測を集めた「世界10大失敗ハイテク予言」を英ハイテク専門誌T3が発表、2005年に英電機大手アムストラッドのアラン・シュガー会長兼CEOが発言した「iPodは絶対に人気が出ない」が1位に選ばれたほか、米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長の“迷予言”も紹介されている。

シュガー会長は、米人気テレビ番組「The Apprentice」の英国版にも出演した実業界の巨人。80年代後半に欧州のコンピュータ市場で25%のシェアを誇ったアムストラッド社の創業者だ。そんなシュガー会長は05年2月に英紙デイリー・テレグラフのインタビューで、ライバルであるアップル社が発売した「iPod」に対し「次のクリスマスにはiPodは死んで、ダメになって、終わる」と発言。しかし、ご存じのとおり「iPod」は世界的な大ヒット商品となり、音楽のあり方を変えたとまでいわれるほどだ。

そんなシュガー会長の不明を物語るかのように、アムストラッド社は07年、英放送事業者ブリティッシュ・スカイ・ブロードキャスティング(BスカイB)に買収されている。

2位は米電機メーカー、ディジタル・イクイップメント・コーポレーション(DEC)創業者のケン・オルセン氏による「家庭用コンピュータは必要ない」(77年)、3位は米家電メーカーLewyt Corp vacuum companyのAlex Lewyt社長による「原子力で動く掃除機は、おそらく10年以内に実現するだろう」(50年代)、4位は「わが谷は緑なりき」「史上最大の作戦」などを手がけた米映画プロデューサー、ダリル・F・ザナック氏による「人々はテレビをすぐに見なくなるだろう。毎晩、木箱を眺めるなんて飽きるだろうから」(46年)、米航空機製造大手ボーイングの技術者による「(定員10人の)ボーイング247より大きな航空機が造られることは絶対にない」(33年)など、いまとなっては赤面してしまいそうな“予言”が並んでいる。

ゲイツ会長の“迷予言”は、7位にランクインした81年発言の「パソコンのメモリは640KB以上を必要としない」。現在はノートパソコンでも4GBのメモリが搭載されることも珍しくなくなり、640KBは家庭用ゲーム機のものより少ない。まさに“赤面予言”だろう。ゲイツ会長の予言は9位にも入っていて、そちらは比較的最近、04年に世界経済フォーラムで発言した「いまから2年後に、スパムメールは撲滅される」だった。


◎世界10大失敗ハイテク予言(T3誌選)
1位 「iPodは絶対に人気が出ない」(2005年)
――アラン・シュガー卿(英電機メーカー会長)
2位 「家庭用コンピュータは必要ない」(1977年)
――ケン・オルセン氏(米電機メーカー創業者)
3位 「原子力で動く掃除機は、おそらく10年以内に実現するだろう」(1950年代)
――Alex Lewyt(米家電メーカー社長)
4位 「人々はテレビをすぐに見なくなるだろう。毎晩、木箱を眺めるなんて飽きるだろうから」(1946年)
――ダリル・F・ザナック氏(米映画プロデューサー)
5位 「ボーイング247より大きな航空機が造られることは絶対にない」(1933年)
――ボーイング社の技術者
6位 「われわれはロケットで郵便を送れるようになる出発点にいる」(1959)
――アーサー・サマーフィールド氏(当時の米郵政公社総裁)
7位 「パソコンのメモリは640KB以上を必要としない」(1981年)
――ビル・ゲイツ氏(米マイクロソフト会長)
8位 「米国人は電話を必要とするが、英国人には不要。われわれには多くの配達人がいる」(1878年)
――ウィリアム・プリース卿(当時の英郵政局主任技術者)
9位 「いまから2年後に、スパムメールは撲滅される」(2004年)
――ビル・ゲイツ氏(米マイクロソフト会長)
10位 「X線は人々をだますものと立証されるだろう」(1883年)
――ケルビン卿ウィリアム・トムソン(物理学者、英王立協会会長)