岡田ジャパンが、バーレーンに出発する前日、大学生チームと練習試合を行い、まさかの敗戦を喫した。

 大丈夫か岡田ジャパンと言いたいところだが、格下度という点では、 バーレーンも大学生チームに負けていない。大学生チームに敗れることと、バーレーンに敗れることとの間には、大きな差は存在しないのだ。

 バーレーンの人口は約67万人。これは日本の都市では、熊本市の人口に匹敵する。J2に所属するロアッソ熊本が、メンバーを熊本市在住者で構成した場合に限り、バーレーンと対等な関係になる。そう考えて良い。

 ちなみに、岡田ジャパンを倒した流通経済大学は、現在JFL(ジャパンサッカーリーグ=事実上のJ3)で、全18チーム中、8位につけている。つまりロアッソ熊本より実力はワンランク落ちる。バーレーンと同じくらいではないかと想像する理由だ。

 それほど弱いバーレーンに、岡田ジャパンはアジア3次予選のアウェイ戦で、敗戦を喫した。岡田ジャパンへの不安は募るが、一応、敗れた相手は「国」だ。ダメ度では、大学生チームに敗れたことの方が上回るように聞こえる。

 バーレーンと日本との、大小関係が見えにくいことがその原因だ。国対国。代表チーム対代表チームの戦いは、ともすると対等な試合に見える。日本の人口がバーレーンのおよそ190倍、その国土面積がおよそ570倍に相当する大きな国だという意識は芽生えにくい。したがって、番狂わせを喫したというショックも湧きにくい。

 サッカーは番狂わせが起きやすい競技だ。地雷はあちこちに潜んでいる。気をつけていても、踏んでしまう。それがサッカーだ。しかし、人口比でおよそ190倍の差がある国に敗れることは、尋常ではない。日本でサッカーが10番人気のスポーツなら許せる。岸記念体育館の小さな一室に、サッカー協会があった頃の話なら仕方がない。年間予算200億円超。世界でも1、2を争う超ビッグなサッカー協会の支配下にある代表チームが犯したミステイクだ。もっと恥じるべきである。

 今回の予選で日本は、バーレーンの目と鼻の先にあるカタールとも同じ組で戦う。こちらも小国だ。人口は日本のおよそ150分の1(84万人)。国土面積は33分の1に過ぎない。国内でプレイする有力選手を帰化させるなど、やる気は見せているが、それでも本来、日本が勝って当然の相手になる。日本と対等なライバル関係にある国とは言えないのだ。

 そうした認識が、ファンの間にどれほどあるだろうか。日本、バーレーン、カタールの現在のFIFAランクは、35位、66位、81位となっている。35位の日本が66位のバーレーンに敗れたといっても、驚くべきニュースには聞こえない。81位のカタールに敗れたとしても同じだ。よくある話のように聞こえる。日本が、楽勝して当たり前のチームではなく、ほぼ対等な力関係にあるチームのように見えてしまう。

 少なくともメディアが、それに従い、勝てば大喜びすることは間違いない。前回がそうだった。ジーコジャパンがアジアカップを制すると「ジーコは強運の持ち主」とか「ジーコは結果を出す男」と、時の代表監督の采配を絶賛した。その結果、ジーコは85%を越える支持率を集めるに至った。ヨルダンやオマーンといった弱小国に大苦戦し、番狂わせを起こされそうになった事実は、どこかに葬り去られた。その後のW杯予選でも、内容に目を凝らさず「勝った勝ったまた勝った」と煽り、勝利の美酒に酔いしれた。W杯本番で勝てないわけ はそこにある。岡田ジャパンは予選突破して当然。この常識を踏まえながら、目の前の試合に接するべきである。

 もしW杯に行けなかったら大事件だと捉えるべきである。どこかにも書いたのだけれど、代表チームの活動は、しばらく停止にすべきだろう。これは、対外試合を自粛するぐらいの大問題だ。前に進む前に、一度立ち止まり、一度じっくり考えるべきである。トルシエジャパンが消化不良の結果に終わると即、ジーコだといい、ジーコがダメだと即、オシムだといい、そしてオシムが病に倒れると、すかさず岡田サンの名前を持ちだし、前へ前へセカセカ進もうとした川淵会長時代のやり方とは、おさらばしなければならない。歴史的な敗戦だと位置づけ、じっくり腰を据え、抜本的改革に着手しなくてはならない。これまで通り興業優先の対外試合などしている場合ではないのだ。

 幸いにも、犬飼新会長のこれまでの言動には納得させられる点が多い。前会長とは異なる、的確な判断が目立っている。川淵会長時代に誕生した岡田ジャパンとは、どう向き合うつもりなのか。少なくとも今予選に対して、勝って当たり前。負ければそれこそ大事件の自覚はあるはずだ。岡田ジャパンの戦いぶりはもとより、犬飼さんの口からその都度、発せられるであろうコメントにも注目したい。代表監督がダメでも、会長さえしっかりしていれば、明るい未来が待ちかまえている。僕はそう思うのだ。