北京オリンピックが10倍楽しくなる漫画【カオス通信】
いよいよ北京オリンピックが始まります。私も一応テレビ雑誌で放送スケジュールをチェックしてみたのですが、「絶対見たい!」と思える競技が案外少なくて驚いてしまった次第。考えてみればオリンピックはメジャーな競技ばかりではないのですから、ある意味当然の結果だったのかも知れません。仮にメダル候補の日本人が出ていたとしても、ルールもよくわからない競技では観戦していても盛り上がるのは難しいですからね。
とりあえず水泳とかサッカーとか馴染みのある競技を見れば充分だろう、と思っていた時に書店で目に入ってきたのがオリンピック採用競技を題材にした漫画でありました。「そうか、漫画で予習すればいいのか!」ということに気付いたので、今回はオリンピックを楽しむために役立つスポ根系の漫画をご紹介してみます。
■『ビーチスターズ』(小学館)※6巻まで発売中
作画:森尾正博
種目:女子ビーチバレー
●オススメ度:★★★★☆(読むなら今しか!)
本作の主人公・七瀬イルカは、身長150cmの小柄な女の子(高校2年生)。物語はイルカが情熱を傾けていた女子バレー部が廃部してしまうところから始まり、その後出会ったビーチバレーを新たな目標にして頑張っていく姿が描かれていきます。
この『ビーチスターズ』を読む以前、ビーチバレーの知識は「ビーチでプレイする2人制バレー」ぐらいしかなかった私ですが、読後はビーチバレーというスポーツに対する認識を改めざるを得ませんでした。6人制バレーとの戦略面での違いや、砂の上でのダッシュ&ジャンプすることの難しさなど、スポーツニュースで試合結果を見る程度では絶対にわからない様々なポイントが理解できて、まさに目からウロコ状態。
表紙だけ見ると水着の女の子達が活躍する萌え系学園ドラマに見えなくもないのですが、実際は今どき珍しい正統派スポ根漫画であります。アクション描写もかなり凝っていて、特に5巻以降になるとまるで超能力バトル漫画を読んでいるような錯覚を覚えることもしばしば。セパレート水着なユニフォームも戦闘服にしか見えなくなってきます。
イルカ以外の登場人物達が抱える様々な悩みや野望もしっかり描こうとしている部分も好印象。ストーリー展開がやや荒削りな部分もあるのですが、漫画ならではの魅力が詰まった良作であることは確かです。「サンドソックス」「ポーキーショット」といった聞き慣れない用語も新鮮。ビーチバレーと聞いたら浅尾美和ぐらいしか思い浮かばない人に是非読んでもらいたい作品であります。
■『美晴ライジング』(小学館)※3巻まで発売中
作画:大谷じろう
種目:女子ソフトボール
●オススメ度:★★★☆☆(実業団というのがミソ)
実業団の女子ソフトボール部を描いた作品です。主人公の天野美晴は高校を卒業したばかりの新入社員。所属の大手スーパー「ライズマート」女子ソフトボール部は、かつては強豪チームであったものの現在は廃部の恐れもある弱小チームという設定です。先輩達は自分たちの悲観的な将来を打破するため勝負に貪欲だったりするのですが、主人公の美晴はソフトボールができるだけで幸せといった感じのやや脳天気なキャラとなっています。
本作では社員として働きながらソフトボールをする実業団ならではのエピソードも描かれています。上司に「ソフト部員は脳まで筋肉か!?」とイヤミを言われたり、店内でヤクザとトラブルを起こしてクレーム処理に奔走したりと、ソフトボール以外の苦労が多いところがなんだか泣けてきます。
それでも基本はスポーツ漫画なので、大半のページはソフトボール関連の描写に費やされています。ピッチャーとの距離が野球よりも近いので球速の体感速度が上がることや、延長戦は2塁にランナーを置いてから行うなど、ソフトボールならではの特徴を知ることもできます。
作者の大谷じろう氏は『下北GLORYDAYS』といったお色気漫画で知られた人物。担当編集の指導なのか作者の趣味なのか定かではありませんが、妙に入浴シーンが多かったり、各話のトビラ絵が半裸のグラビア調だったりするのはご愛敬といったところでしょう(3巻以降は自粛してる模様)。試合描写にやや迫力不足な面もありますが、3巻あたりから絵の描き方が変わって段々良くなってきているので、今後に期待といったところです。
■『ちゅうじょ』(実業之日本社)※全1巻
作画:中 祥人、原作協力:星井博文
種目:女子レスリング
●オススメ度:★★☆☆☆(舞台裏の描写に資料価値あり)
中京女子大レスリング部の奮闘を描いたドキュメント作品です。登場するのは全て実在の人物なので、オリンピック観戦に向けた手引き書としてはそれなりにアリだと思います。ただ純粋に漫画作品として読んだ場合、ちょっと物足りないというのが正直なところ。これは悪役に相当する人物が出てこない(出せない)ことが影響している気がします。フィクションならライバルを罠に掛ける黒いキャラを投入して盛り上げることもできますが、ドキュメントでその方法を取るわけにもいきませんからね。
本作はアテネ五輪の金メダリスト・吉田沙保里が、2008年1月に開催されたワールドカップで敗北し、自身の連勝記録が119連勝でストップしてしまった瞬間から始まります。その吉田選手の復活への歩みを軸に、共に汗を流す仲間達の努力や葛藤が描かれていきます。選手達のために自費でローンを組んで寮を建てた監督の栄和人氏も大活躍。女子レスリングのガイドブックが読みたいという人は購入を検討してもいいんじゃないでしょうか。細かいテクニック解説もあるので、読後にレスリングを観戦すると面白さは違ってくると思います。
■カオス通信バックナンバー
・ポニョ vs 鬼太郎 vs ギララ 夏の映画ガチンコレビュー
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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。
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■『ビーチスターズ』(小学館)※6巻まで発売中
作画:森尾正博
種目:女子ビーチバレー
●オススメ度:★★★★☆(読むなら今しか!)
本作の主人公・七瀬イルカは、身長150cmの小柄な女の子(高校2年生)。物語はイルカが情熱を傾けていた女子バレー部が廃部してしまうところから始まり、その後出会ったビーチバレーを新たな目標にして頑張っていく姿が描かれていきます。
この『ビーチスターズ』を読む以前、ビーチバレーの知識は「ビーチでプレイする2人制バレー」ぐらいしかなかった私ですが、読後はビーチバレーというスポーツに対する認識を改めざるを得ませんでした。6人制バレーとの戦略面での違いや、砂の上でのダッシュ&ジャンプすることの難しさなど、スポーツニュースで試合結果を見る程度では絶対にわからない様々なポイントが理解できて、まさに目からウロコ状態。
「オリンピック目指して頑張ります!!」という浅尾美和さんのオビコメントが今見ると泣ける。漫画は面白いです。 |
表紙だけ見ると水着の女の子達が活躍する萌え系学園ドラマに見えなくもないのですが、実際は今どき珍しい正統派スポ根漫画であります。アクション描写もかなり凝っていて、特に5巻以降になるとまるで超能力バトル漫画を読んでいるような錯覚を覚えることもしばしば。セパレート水着なユニフォームも戦闘服にしか見えなくなってきます。
イルカ以外の登場人物達が抱える様々な悩みや野望もしっかり描こうとしている部分も好印象。ストーリー展開がやや荒削りな部分もあるのですが、漫画ならではの魅力が詰まった良作であることは確かです。「サンドソックス」「ポーキーショット」といった聞き慣れない用語も新鮮。ビーチバレーと聞いたら浅尾美和ぐらいしか思い浮かばない人に是非読んでもらいたい作品であります。
■『美晴ライジング』(小学館)※3巻まで発売中
作画:大谷じろう
種目:女子ソフトボール
●オススメ度:★★★☆☆(実業団というのがミソ)
実業団の女子ソフトボール部を描いた作品です。主人公の天野美晴は高校を卒業したばかりの新入社員。所属の大手スーパー「ライズマート」女子ソフトボール部は、かつては強豪チームであったものの現在は廃部の恐れもある弱小チームという設定です。先輩達は自分たちの悲観的な将来を打破するため勝負に貪欲だったりするのですが、主人公の美晴はソフトボールができるだけで幸せといった感じのやや脳天気なキャラとなっています。
巨乳な主人公が活躍する本格ソフトボール漫画。回を追うごとに作者の意気込みが増している気がします。 |
本作では社員として働きながらソフトボールをする実業団ならではのエピソードも描かれています。上司に「ソフト部員は脳まで筋肉か!?」とイヤミを言われたり、店内でヤクザとトラブルを起こしてクレーム処理に奔走したりと、ソフトボール以外の苦労が多いところがなんだか泣けてきます。
それでも基本はスポーツ漫画なので、大半のページはソフトボール関連の描写に費やされています。ピッチャーとの距離が野球よりも近いので球速の体感速度が上がることや、延長戦は2塁にランナーを置いてから行うなど、ソフトボールならではの特徴を知ることもできます。
作者の大谷じろう氏は『下北GLORYDAYS』といったお色気漫画で知られた人物。担当編集の指導なのか作者の趣味なのか定かではありませんが、妙に入浴シーンが多かったり、各話のトビラ絵が半裸のグラビア調だったりするのはご愛敬といったところでしょう(3巻以降は自粛してる模様)。試合描写にやや迫力不足な面もありますが、3巻あたりから絵の描き方が変わって段々良くなってきているので、今後に期待といったところです。
■『ちゅうじょ』(実業之日本社)※全1巻
作画:中 祥人、原作協力:星井博文
種目:女子レスリング
●オススメ度:★★☆☆☆(舞台裏の描写に資料価値あり)
中京女子大レスリング部の奮闘を描いたドキュメント作品です。登場するのは全て実在の人物なので、オリンピック観戦に向けた手引き書としてはそれなりにアリだと思います。ただ純粋に漫画作品として読んだ場合、ちょっと物足りないというのが正直なところ。これは悪役に相当する人物が出てこない(出せない)ことが影響している気がします。フィクションならライバルを罠に掛ける黒いキャラを投入して盛り上げることもできますが、ドキュメントでその方法を取るわけにもいきませんからね。
「中京女子大」の略で「ちゅうじょ」。マッチョな女子レスラー達が本気で取っ組み合うガチ漫画です。 |
本作はアテネ五輪の金メダリスト・吉田沙保里が、2008年1月に開催されたワールドカップで敗北し、自身の連勝記録が119連勝でストップしてしまった瞬間から始まります。その吉田選手の復活への歩みを軸に、共に汗を流す仲間達の努力や葛藤が描かれていきます。選手達のために自費でローンを組んで寮を建てた監督の栄和人氏も大活躍。女子レスリングのガイドブックが読みたいという人は購入を検討してもいいんじゃないでしょうか。細かいテクニック解説もあるので、読後にレスリングを観戦すると面白さは違ってくると思います。
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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
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