最新!「社会貢献にお金を出す」100社ランキング

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トヨタ自動車とソフトバンクの新会社設立会見での豊田章男社長、2018年10月(撮影:風間仁一郎)

社会貢献に多くの金額を支出している企業はどこか。

『CSR企業総覧(ESG編)』2019年版掲載の社会貢献活動支出額のデータを使い、支出額と経常利益に対する支出比率のランキングを作成した。


なお、詳細のランキングは4月15日に発売した『CSR企業白書』2019年版に掲載しているのでこちらもご覧いただきたい。

まず、2017年度の社会貢献支出額のランキングから見ていこう。

トップは6年連続のトヨタ自動車で243.7億円。

2015年度253.8億円、2016年度292.4億円と2位以下を大きく引き離す。

同社は「ステークホルダーの笑顔のために」を基本に本業での貢献だけでなくさまざまな社会貢献活動に取り組んでいる。

1位はトヨタ自動車、2位にホンダがランクイン

例えば、1975年に開始し参加者が累計26.8万人となった幼児向け交通安全教室「トヨタセーフティスクール」。若手アーティスト支援を目的として地域住民や福祉施設の人々を招待し東京本社のロビーやトヨタ博物館で開催する「トヨタロビーコンサート」。

全国トヨタ販売店と協力して行う小学校への「クルマ」を題材にした出前授業「トヨタ原体験プログラム」。「自動車文化」や「ものづくり文化」継承のために運営する「トヨタ鞍ヶ池記念館」「トヨタ博物館」「トヨタ産業技術記念館」など多くの活動を行っている。

ほかにも公募制の「トヨタ環境活動助成プロジェクト」でNGO・NPOの生物多様性などのプロジェクト支援や「トヨタ白川郷自然學校」「トヨタの森」の運営、世界各地での温暖化防止等の環境保護活動といった環境面の取り組みも多岐にわたる。

東北ではトヨタ自動車東日本でのコンパクトカーの製造、トヨタ東日本学園での人材育成、スマートグリッド技術を活用した農商工連携事業など本業を絡めた東日本大震災の復興支援活動にも積極的だ。

2位はホンダの74.2億円。地域自治体と協力しながら全国の砂浜を清掃する「Hondaビーチクリーン活動」「高等専門学校ロボットコンテスト」の活動支援、「TOMODACHIイニシアチブ」を通じて日米の学生が文化交流を体験する機会提供など幅広く取り組んでいる。

インド南部で零細漁民を対象にマイクロファイナンスなどを活用した「小型ボート用ロングテールエンジンセット」の普及を推進。日本から漁業の専門家を派遣し、現地に適した漁法と管理漁業の指導も行い、途上国の持続可能な成長への働きかけも行っている。

3位はNTTドコモの64.8億円。2015年度の49.8億円、2016年度の64.7億円と高い水準を維持している。全国49カ所、約190haの「ドコモの森」活動での環境保全推進。スマートフォンや携帯電話のルールやマナー、身近なトラブル対処方法を啓発する「スマホ・ケータイ安全教室」の全国無償開催、アジア諸国の留学生を支援する「ドコモ留学生奨学金」制度なども行っている。

モバイルICTやIoTを活用した社会課題解決にも積極的だ。畜産農家の負担を軽減し、第1次産業の生産性向上を図ることを目的に分娩時に親牛の体温を感知し、メール通知するシステム「モバイル牛温恵」を提供するなど本業を生かした活動も多い。

以下、4位日本電信電話64.0億円、5位JT60.9億円、6位三井不動産60.3億円、7位サントリーホールディングス58.4億円、8位武田薬品工業55.9億円と続く。

10億円以上の支出は62位旭化成(10.0億円)まで。100位フジクラ(6.0億円)までの100社の合計は1958億円と多くの金額が社会貢献に使われている。

経常利益に対する支出額の割合をランキングに

続いて経常利益に対する社会貢献支出額が占める比率(「社会貢献支出比率」)を見ていこう。バラツキをならすため経常利益と社会貢献支出額はそれぞれ3年平均で計算。さらに利益が低く比率が高くなる企業を除外するため、売上高経常利益率1%以上、ROEプラスを条件とした。

トップは2年連続で印刷業中堅のサンメッセ(7.92%)。3年平均の経常利益2.48億円に対して0.2億円を支出する。

「地域社会との共生」をCSR活動の重要テーマ(マテリアリティ)に掲げ、本社がある岐阜県大垣市を中心に積極的に活動。知的障害者授産施設「ハーモニー大垣」によるパンの出張販売会の社内実施や本社野球場の少年野球や中学校等への貸し出しなどを行っている。

地元に生息する絶滅危惧IA類「ハリヨ(トゲウオ科の淡水魚)」を、岐阜県から許可を得て飼育したり年2回、全事業所で「オールクリーン大作戦」と称する清掃活動を実施するなど環境活動にも積極的だ。

岐阜県内の製紙会社や森林組合との協働でオリジナルの間伐材ペーパーの開発、販売を進めるなど事業活動による社会課題解決の取り組みも高いレベルだ。

2位は大日本印刷の6.14%。経常利益467億円に対して28.7億円を支出する。本社所在地の東京・市谷地区で武蔵野の雑木林を再生する「市谷の杜」計画を推進。全国の社員食堂で販売する「東北応援メニュー」の売り上げから東日本大震災被災地への寄付も継続している。

3位はエーザイで4.31%。6164億円の経常利益に対して26.6億円支出している。アジア諸国における医療技術向上に向けた医療技術移転交流の支援や2013年から4年間で計100万ドルのアメリカがん克服基金への寄付など本業を中心に幅広い活動を行っている。

以下、4位ファンケル4.04%、5位ツムラ3.95%、6位日清食品ホールディングス3.93%、7位ベネッセホールディングス3.89%、8位太洋工業3.85%と続く。

日本経済団体連合会(経団連)が1990年に設立した「1%(ワンパーセント)クラブ」では「経常利益(法人)や可処分所得(個人)の1%以上を目安に社会貢献活動に支出しよう」と呼びかける。今回のランキングでは93位のクレハ(1.00%)までが1.0%以上となっている。これから開始しようという企業は社会貢献活動の支出の目安にするとよさそうだ。

さて、3年間のデータが取れる683社の社会貢献支出額の合計は、2015年度2247億円、2016年度2492億円、2017年度2323億円と支出額は前年比で微減となった。2016年度は4月に熊本地震が発生したため、その支援で2015年度に比べて大きく増加したと考えられる。

東日本大震災の復興支援活動の継続状況は?

最後に毎年ご紹介している「企業の東日本大震災復興支援の状況」を見ていこう。2018年6月末時点で復興支援を「行っている」は47.2%(498社)、「行っていない」が50.6%(534社)だった。初めて「行っている」が過半数を割った昨年(49.4%、492社)をさらに下回った。

2011年夏時点には94.7%(730社)が何らかの支援活動を行っていたことと比べると活動後退は明らかだ。確かに現地に拠点のない企業にとって継続して行うことは難しい面もある。

復興支援を継続するには関係の深さも必要だ。今後は東北との結び付きが強い会社中心での活動になっていきそうだ。

国連は2015年9月に貧困など世界の課題を2030年までに解決するための目標、SDGs(持続可能な開発目標)を採択した。

この中には「貧困をなくす」「質の高い教育の提供」「ジェンダー平等の実現」「誰もが使えるクリーンエネルギーの実現」「持続可能な消費と生産の確保」といった17の目標とそれぞれに設定された合計169のターゲットがあり企業の積極的な関与が期待されている。

中にはすべてビジネスに結び付けて行うべきという考えもあるようだが、社会貢献的な活動でないと取り組みにくい分野も多い。『CSR企業総覧』に掲載している各社の事例を見ると、それぞれの理念に基づき、「必ずしもすぐに利益を求めない」活動にも幅広く取り組んでいる。

今後も本業で行える活動とそれ以外をバランスよく組み合わせて活動していく企業は多そう。そうした中から最終的にビジネスに結び付くテーマが出てくれば理想的だが、長い目で見ていく必要はありそうだ。