人生何周目かと思わせる落ち着きぶりと聡明さを見せる寺田心さん/『トクサツガガガ』(C)NHK

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 作品内に登場する特撮の本気の作り込みと、特撮をはじめとしたさまざまなジャンルのオタクの多様なスタンスへの共感などから、じわじわと評価を高めている『トクサツガガガ』(NHK)。本作では、オタクという共通点があるのみで、年齢性別や、愛する対象が異なる者同士の間に育まれていく友情がまた楽しい。それを感じさせる大切なピースのひとつに、ヒロイン・仲村叶(小芝風花)と独特な関係を築いていく、特撮好きの小学三年生「ダミアン」こと田宮拓を演じる寺田心さんがいる。

【写真】微笑ましい珍コンビぶりを見せる寺田心とドレス姿の小芝風花

■「くん」でも「ちゃん」でもなく「さん」が相応しい

 寺田心さん。思わず口から出てしまう、その呼び方。「くん」でも「ちゃん」でもなく「さん」がこんなにも似合う10歳が、ほかにいるだろうか。と思ったら、Twitterなどでも「寺田心さんめっちゃ可愛いな」「寺田心さんの名言タイム」「寺田心さんのダミアン、若干幼すぎ感はあるけどハマり過ぎではないか。心さんっておいくつでしたっけ」など、「寺田心さん」呼びしている人が多数いた。

 心さんが芸能界入りしたきっかけである芦田愛菜の場合、美しく聡明に成長したことによって「愛菜ちゃん」と言うのが憚られるようになり、「愛菜さん」呼びになってきた。でも、心さんの場合は、ちょっと異なる「さん」呼びである。なんなら「先輩」でも良い。

 そもそも「こまっしゃくれている」などの理由から、子役を嫌う人は昔からけっこういたものだが、いまどきの子役はちゃんと「しっかりしているけど、子どもっぽく無邪気」感を出せる子が多く、嫌われにくい。にもかかわらず、心さんは何かとネット上で叩かれることがあった。TOTO「ネオレスト」CMシリーズの「リトルベン」で大ブレイクしたが、「可愛い」と絶賛される一方で、「ムカつく」などアンチの声もあった。

 その理由には、「絵に描いたような幼い風貌と、幼い声、それに似つかわしくない落ち着きと礼儀正しく丁寧な言葉遣い」のギャップがあったろう。まるで「見た目は子ども、頭脳は大人」のコピーでおなじみの人気漫画&アニメ『名探偵コナン』のようである。コナン君は謎の組織によって幼児化させられた高校生だから良いが、心さんは実際に子どもだ。幼児なのに意外に要領が良く、丁寧ながらもたどたどしさを醸し出す言葉遣い「〜でしゅ」でおなじみのご長寿アニメ『サザエさん』のタラちゃんがネット上で叩かれるのと、近い理由かもしれない。

■性別・年齢を超えた奇妙な友情

 そんな心さんについて、『トクサツガガガ』を観た視聴者からは「ダミアン役で好きになった」という声が多数挙がっている。心さん演じるダミアンは、とにかくクールなのだ。

 ヒロイン・仲村が探していたカプセルトイを発見。台に残る4つのなかにお目当ての『ジュウショウワン』の「シシレオー」があると予想して全部購入しようとするとき、最後のひとつの段階で現れたのが「ダミアン」こと心さんだった。しかも、少年とは思えない鋭い観察力で、仲村がシシレオーを狙っていたことを察知する。仲村は泣く泣く譲ろうとしたり、これまで買った3つをあげるかわりに最後の1個を譲ってもらおうとしたり、挙句、最後を自分で買ってダミアンに渡し、「今度買うカプセルを代わりにくれ」と交換条件を出したりする大人げない(大人ぶっているが)必死さだった。

 しかし、ダミアンは近くに『ジュウショウワン』の台があることを教えてくれ、そこで無事、仲村も「シシレオー」をゲット。ジュウショウワン好きの“同志”としての性別年齢を超えた奇妙な友情が始まる。

■落ち着き、達観……心さんの放つ「圧倒的上位」感

 ちなみに、ダミアンは親の勧めで塾に行かされていたり、お小遣いが少ないからカプセルトイをあまり買えなかったりする、「ごく普通の子ども」の悩みも持っている。その一方で、幼い頃にあまりカプセルトイが買えなかったと話す仲村に「そのときがあったから、今があるんですね」と大人びた返しをしたり、リアル(現実世界)が(不本意なことのために)時間やお金を奪っていくと嘆く仲村に「なんかリアルってまるで怪人だね」と呟いたり、「クラスメートでも友だちかはわからないでしょ」と鋭い視点を述べたり、塾に行く苦痛の道のりが少しでも楽しくなるよう、地下鉄の通路を「ジュウショウワンの秘密基地」と見立てていたりする。

 そんな子どもらしいルックスで、大人のような冷静さを持ちつつ、想像力を駆使して現実に立ち向かうカッコよさを表現できる子役は、まさに寺田心さんしかいないだろう。

 思えば、寺田心を「さん」呼びしてしまうのも、大人げなく叩く人たちも、根底にある思いは共通している気がする。それは、心さんに対する畏敬・畏怖ではないだろうか。子どもは本来、弱くて守ってあげなくてはいけない存在だと思われる。しかし、表面を子どもっぽさで覆いつつも、人生何周目かと思わせる落ち着きぶりと聡明さを見せる心さんは、圧倒的に自分たちよりも強く、上位感がある。だからこそ、心さん演じるダミアンの「名言製造機」と言われる達観したセリフが強く心に響くのだろう。

 心のなかで呼んでいたはずの「ダミアン」という呼び名を、無意識で本人に向かって使い、さらに親しくなると舐めた様子で「デイミアン」などとアレンジまで加える子どもっぽいヒロイン・仲村。それに対し、変な呼び名もわりと普通に聞き入れ(聞き流し?)て付き合っている達観したダミアン。観ていてうらやましくなるほどの名&珍コンビだ。
(文/田幸和歌子)