商品やサービスの魅力をぐっと増すために考えたいことは?(写真:A_Team / PIXTA)

世の中は、さまざまな商品・サービスであふれ、新たな商品・サービスも日々、無数に生まれています。

「ネーミング」が商品・サービスの運命を決める

一方、せっかく苦労して生み出したものも、何もしなければ埋もれてしまいます。生活者にしっかりと認知され、手に取ってもらい、さらには「なくてはならないもの」として末長く愛され続けるものになってほしい。商品・サービスをつくる人たちにとっての願いでしょう。

ただ、その想いに反して、生き残る商品・サービスは残念ながら一握りです。商品・サービスをつくった後にすることは、ターゲットに届けるためのマーケティング活動です。そして、その結果として「ブランド」が確立できれば、競合との差別化もでき、生活者に末永く愛され、長く残るものになっていきます。

では、どのようにマーケティングしていこうかと考えるとき、すぐに思い浮かぶことに広告やPRがあります。商品・サービスのネーミングから、どのようなキービジュアルやキャッチコピーで宣伝するか、旬のタレントを起用したCMを打ったほうがいいのではないか、話題になるイベントを企画してSNSでの拡散を狙うなど、いろいろと考えると思います。

拙書『人がうごく コンテンツのつくり方』でも紹介していますが、誤解を恐れず言えば、私は商品・サービスを広めるためには、「ネーミング」が命だと考えています。そして、マーケティング活動を行ううえで、最初の1歩であるネーミングに際しては、商品・サービスそのものを「コンテンツ化する」という視点で考えることをおすすめしています。

人は「言葉」からモノをイメージする

「コンテンツ」とはデジタルの世界では、言葉どおり「中身や内容」という意味で、情報、文章、音楽、動画などを指したりしますが、一般的にはアニメやマンガ、映画や音楽、ゆるキャラやゲームなど、モノや映像がブランド化されて、それがビジネスにつながったりしているものが、コンテンツだと認識されていると思います。

近年、商品・サービスを売るという目的においても、コンテンツの力が注目され、「コンテンツマーケティング」の重要性が叫ばれています。上司や取引先から、「何かコンテンツをつくってよ」と漠然とした依頼をされ、何をつくったらいいかわからず、頭を抱えている方も多いと思います。

「コンテンツをつくらなければ……」というプレッシャーで、途方に暮れてしまう気持ちはわかります。ただ、実は難しく考える必要はないのです。ネット上の記事も、今日飲んだミネラルウォーターも、今着ている服も、みんな「コンテンツ」です。正確には世の中のものすべてが「コンテンツになる可能性を秘めて」います。

なぜなら、人からコンテンツだと認識されるかどうかが、コンテンツであるかそうでないかの境界線だからです。誰かに「それ、コンテンツだよね」と思われた瞬間に、その商品やサービスは「コンテンツ」になります。だから、新しいモノを生み出す必要はなく、商品・サービスそのものを「コンテンツ化」していくだけで大丈夫なのです。

人がモノをイメージするのは「言葉」からです。だから私は、商品・サービスを世の中に広めるうえで「ネーミング」を重要視しています。みかんと言われればオレンジ色の果物をイメージします。グレープフルーツはやや大きめの黄色い果物です。ただ、グレープフルーツを「イエローメガみかん」だと言われたら、それはもうグレープフルーツではない新しいコンテンツとして、人はイメージしてくれます。そうです、言葉の置き換えひとつでも、商品・サービスは「コンテンツ」として認識される可能性があるのです。

言葉の置き換えだけで「コンテンツ」になる

アップルの「iPhone」は言わずと知れた爆発的ヒット商品で、スマホの代名詞と言っても過言ではないと思いますが、この商品が発表されたとき「iPod」「携帯電話」「ネット通信機器」の3商品の合体版だとプレゼンされていました。ただ、商品名を「iPhone」と言い切ったことが、その後の大ヒットにつながったのだと私は思っています。

もしこれが、「電話機能付きiPod」や「電話のできるパソコン」だったらどうでしょうか。「電話(Phone)」を主語にしたところに人を惹きつけるものがあったのではないでしょうか。「電話(Phone)」だったから、iPodユーザー以外のたくさんの人たちも、生活の一部になることをイメージできたのだと思います。このように「言葉の置き換え」はコンテンツ化を図るうえで有効なテクニックです。

唐突ですが、私はプリンが大好きです。その中でもパステルの「なめらかプリン」という商品が大好きです。極限まで柔らかくした、まさになめらかなプリンです。初めて食べたときの感動は忘れません。差し入れするときはいつもパステルで買っています。みんなとても喜んでくれます。しかし時折、思うことがあります。


「これは、もしかしたら、プリンではなく、カスタードクリームなのではないか……」と。もちろんあれだけおいしい大ヒット商品ですから、さまざまな技術やノウハウがあってこそ生まれたものだと思います。でも、もしこの商品が言葉の”置き換え”でできたものだとしたらスゴすぎます。真相はわかりませんが(笑)。

コンテンツ化とは「価値を感じたい」と思っている人たちに、「価値を感じてもらえるよう仕立てる」ことです。コンテンツ化は、いまどきの言葉にすると「マッチング」かもしれません。新しい商品・サービスを世に出そうとするときは、ぜひその商品・サービスそのものを「コンテンツ化する」という視点で考えてみてほしいと思っています。