茨城県知事 大井川和彦氏

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2017年、民間調査機関の「地域ブランド調査」で茨城県は5年連続の最下位だった。調査方法に対する批判もあるが、「魅力度が低い」とされるのは不名誉なことだ。このほど24年ぶりの知事交代を実現した大井川和彦県知事は、この結果を正面から受け止め、魅力度アップを進めるという。知事を直撃した――。

■「ちょっとだけ上がればいいや」という意識ではダメ

【大井川】たしかにこの調査だけをもって「茨城県に魅力がない」と認めるのは短絡的です。しかし、結果は結果として真摯に受け止めるべき。そのうえで「茨城県はとても魅力のあるところだ」と、いろんな人から言ってもらうことが私の仕事です。

では「魅力」はどこから生じるのか。それは観光面の魅力、住みやすさ、所得の高さ、食べ物のおいしさなどさまざまな側面から来ています。こうしたことすべてについて、よりよくしていく努力を重ねることが魅力度アップにつながると考えています。

――具体的には?

【大井川】小手先の対策ではダメだと思います。17年の茨城県は、県北を舞台にしたNHKの連続テレビ小説「ひよっこ」がヒットし、県南生まれの稀勢の里関が横綱に昇進、私の同級生でもある水戸一高出身の恩田陸さんが直木賞と本屋大賞をダブル受賞して大いに盛り上がった。それでもなお最下位です。意識を変える必要があるんです。

「下から何番目の位置に、ちょっとだけ上がればいいや」という意識があるとしたら、それこそが茨城県の魅力を一番損ねている。茨城県民のいいところであり悪いところでもあるのですが、現状に満足してしまう気持ちがある。そうではなく、常にトップを目指すという気迫と行動力と挑戦意欲を持たなければいけないと思っています。

茨城県は工業、農業ともに産出額は全国でも上位に位置し、とりわけ農業は北海道に次ぐ規模を誇ります。しかし、仔細に見ると市場で高く売れるトップブランドの農産物は意外と少ない。たとえば茨城県のメロンの出荷額は多いが、高級メロンの代名詞は北海道の夕張メロンです。これからはメロンでも栗でもイチゴでも、有名産地に負けない高級品をつくる努力をし、そのことをどんどんアピールしていきたい。

農業だけに限りません。茨城県には最高級というより、そこそこの品質のものを大量に売るというビジネスモデルに安住しているところがあった。それは今後の人口減少社会では通用しません。まず高級ブランドという「高い山」をつくり、そこから裾野を広げていくという考え方に切り替えていかなければならない。国内市場が縮小する中では農産物輸出を本格化させなければいけませんが、海外で売るにはトップブランドでなければ相手にしてもらえないという事情もあります。「この程度でいいや」ではなく、「もっと上を目指す」「世界に出る」という意識に変えていくことが重要なんですよ。

■「そこそこ」じゃダメ、トップを目指す

――県内にはつくば市、ひたちなか市、日立市といった産業や研究施設の集積地があります。

【大井川】つくば市の高いブランド力、潜在力を生かして、今後は「つくばバレー」と呼ばれ、世界中の起業家があこがれて集まってくるような場所に育てたい。ひたちなか市も元気のいい企業が多く、新しいことにチャレンジしようという起業家マインドの旺盛な人が多いと思う。茨城から新しい産業が興るように仕掛けたい。

たとえばマイクロソフト時代に知り合ったインドのベンチャーキャピタリストと連携できないかと考えています。県内の企業とインドの企業を結びつけるとか、最初から世界市場をにらんで研究開発を進めるとか。

――今後の魅力度ランキングでは何位を目指しますか。

【大井川】もちろんトップを目指します。トップを目指さないかぎり、順位なんて上がりませんから。

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大井川和彦(おおいがわ・かずひこ)
茨城県知事
1964年、茨城県生まれ。水戸一高、東京大学法学部卒。旧通産省で初代シンガポール事務所長などを務めた後、マイクロソフト常務、シスコシステムズ専務、ドワンゴ取締役を歴任。2017年9月から現職。
 

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茨城県知事 大井川 和彦 聞き手・文=面澤淳市(プレジデント編集部) 撮影=永井 浩)