RHYMESTERの宇多丸/photo by 古川寛二 / (C)KADOKAWA

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RHYMESTERが約2年ぶり11枚目となる新作アルバム「ダンサブル」をリリースした。感覚的に踊れて楽しめる本作について、MCの宇多丸を直撃した。

「RHYMESTERがインタビュー受けにやって来た!どこに来た!?編集部〜♪」というわけで、写真の一覧はこちら

■ 「若手には出せないRHYMESTERだけの味が今作にはきっとあるはず」

――アルバムタイトルが直球ですね!

「RHYMESTER史上で、最もキャッチーでのれるアルバムだと思うよ。前回のアルバム『Bitter, Sweet & Beautiful』はよくも悪くも少し重たい部分があって、リリース当初から『次はカラッと抜けた作品がいいね』とメンバーと話をしていたの。そうして完成したのが、今回の『ダンサブル』。タイトルもわかりやすいでしょ?陰と陽の反転というか、なにも考えずに踊れるブギーなダンスチューンを多数収録していて、誰にでも楽しんでもらえるんじゃないかな」

――歌詞の美しい日本語も印象的です。

「いやいや、美しい日本語とか言われるとおもはゆい(笑)。でも、RHYMESTERは聴き取りやすくて正しい日本語の表現をいつも心がけてきましたからね」

――陽気な楽曲が多い一方、リリック(歌詞)の端々からは矜持も感じられました。

「自分たちのキャリアについて今さら多くを語る必要はないし、それは曲から自然とにじみ出るものだと思ってるんですよね。『フリースタイルダンジョン』の影響もあって昨今MCバトルがブームで、今作に収録している『スタイル・ウォーズ』という曲のような状況が起こっている。それだけでも最高なのに、自分たちがその一角にいられるのはすごく幸せだよね。でも、そんな中でほかと並べられても負けないというか。そもそも比べられることに違和感があるんだけど(笑)、若手には出せないRHYMESTERだけの味が今作にはきっとあるはずです」

――個人的には「梯子酒」も最高でした。あとは「マイクの細道」も!

「酒ソングは大好きだから毎回やっているけど、やるからにはエクストリームにふざけないとね!今の時代は埋もれちゃうから、中途半端が一番ダメ。やっぱり爪痕を残していかないと。『マイクの細道』はタイアップ曲だから、ぬけぬけと『ONCE AGAIN』のパート2をやらせてもらったというか、“ライムスターイズム”を込めたというか。歴史を俯瞰して語れるのも自分たちの武器ですから」

――今回のアルバムを発表してその手応えは?

「評価はリスナーの方がすることだから、オレたちがあれこれ言う必要はないかな。でも、個人的な感想は『いいんじゃないですか!?』と(笑)。11枚目のアルバムでこの感覚の作品が作れるのは『大したもんじゃないかな』という自負もありますよ。極端な話、ヒップホップはバックトラック(ビート)を受け取ってリリック(歌詞)を書けば曲が出来上がってしまうじゃない?でも、それをルーティンにしないで深く探っていくのが自分たち。ザ・ビートルズだったら、アルバムを制作する時、まずは音から探っていくわけでしょ?そうした感覚をオレたちは大切にしているし、85点の作品を100満点に昇華するプロセスを踏むように努力してる。つまり、『RHYMESTERは真面目に、ちゃ〜んとアルバムを作ってますよ!』っていうことをもっと知ってもらいたいね(笑)」

■ 「当事者意識を持って参加してください!」

――話は変わりますが、今から2年ほど前でしょうか。ディスに対するアンサーとして宇多丸さんがラジオで放った、「こっちはRHYMESTERだから」の一言。あれはしびれました!

「あったね〜(笑)。少し逸れて、僕のやっているラジオ番組(TBSラジオ『ウィークエンド・シャッフル』)の話になっちゃうんだけど、いい?あれはヒップホップ専門番組ではないから、リスナーの方は“いい意味で僕のことをナメてる”んですよ(笑)。だからそこでもよく言うんだけど、『日本のヒップホップシーンを振り返って、RHYMESTERの名前が出てこなかったらそれはないだろ!』と。驕っているつもりは毛頭ないけど、そうしたキャリアは歩んで来てるはずだから。それがさっきも話した“RHYMESTERの曲からにじみ出る味”になっているんだと思うんですよ。だって、いまだにスタジオで思うんだよね。(DJ)JINのトラックに、オレと(Mummy-)Dが声を録音して出来上がっていくのを聴いていると、『うわ〜っ!これRHYMESTERの曲じゃん!』って(笑)。ここでも知らない方がいると思うからあえて言いますけど、長いキャリアを築いてきたグループですから、RHYMESTERのことをこれからも大切にしてくださいね(笑)」

――全国19か所を回るグループ最長のツアー「KING OF STAGE VOL.13 ダンサブル Release Tour 2017」も始まります。RHYMESTERの真骨頂であるライブが、名古屋や浜松でも観られますね。

「実はいまだに質問されるの。『ヒップホップのライブに行ってみたいけど、どんな服を着て行けばいいんですか?恐いんですか?』って。もう何度でもいいから言わせて!服装は自由!!恐くもないから(笑)。今はファミリーや若いカップルもいるし、本当に楽しい場所だよ。あと、あえてもう1度言いますが、僕らは結構長いことやってます。今はヒップホップがブームだけど、ブームになるずっと前から頑張ってきたRHYMESTERがもしいなくなっちゃったら寂しいでしょ(笑)。だから、日本語ラップの入口としてでもいいので『ダンサブル』を聴いて、ぜひ“当事者意識を持って”僕らのライブに遊びに来てください(笑)」

〈2017年9月12日取材〉写真=古川寛二【東海ウォーカー/初野正和】