赤字トンネル抜けた

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日本マクドナルドホールディングス(HD)の業績の回復基調が鮮明となった。2017年2月9日に発表した16年12月期連結決算で、最終損益が53億円の黒字(前期は349億円の赤字)と、3年ぶりに黒字転換したからだ。サラ・カサノバ社長は決算記者会見で、「ファミリー層を中心に客数が戻った」と笑みを浮かべながら、業績回復の理由を説明した。

マックのトンネルは長かった。2014、15年に期限切れ鶏肉使用や商品への異物混入が相次いで発覚して以降、客離れが深刻化。15年12月期まで2年連続で最終赤字と、業績が低迷していた。カサノバ社長も、この間の決算会見には、きつい表情で臨んでいた。それが、今回は笑顔で報道陣に対応したところに、トンネルを抜けた安ど感がにじみ出た。

カサノバ社長「まだ満足していない」

好調を取り戻した業績は、売上高が前期比19.6%増の2266億円、本業のもうけを示す営業利益も前期の234億円の赤字から69億円の黒字に転換した。いずれも2016年11月に上方修正した業績予想をさらに上回った。

「復活」の要因はいくつか指摘される。全国555店舗を改装して清潔感や快適性を高めた。メニューを刷新し、価格は高いが素材にこだわった季節限定商品などのヒット商品にも恵まれた。2016年7月からスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」と連携したのも集客につながった。不採算店の大量閉鎖も収益改善に貢献した。

さらに日本マクドナルドHDは2017年12月期では、メニュー強化や400近い店舗の改装に加え、引き続き不採算店舗の閉鎖などに努め、売上高は前期比4.3%増の2365億円、最終利益も58.4%増の85億円と増収増益を見込む。が、野心的とも受け取れる業績予想について、カサノバ社長は会見で「まだ満足していない」と述べ、強気の姿勢を見せた。

マクドナルド保有株式の行方に注目

ただ、業績回復の一方で、日本マクドナルドHDの経営体制には不確定要素がある。筆頭株主で株式の約5割を保有する米マクドナルドが株式の一部売却を検討しており、今も投資ファンドなどと交渉しているとされる。会見で報道陣から問い詰められたカサノバ社長は「1年前に売却する可能性があると連絡があった。必要な情報は随時、提供してもらうことになっているが、現時点で情報は更新されていない」と説明するにとどまった。

経営危機から脱却し、これから反転攻勢に出ようとしているが、筆頭株主が変われば経営方針の見直しを求められる可能性も高い。業績にとどまらず、米マクドナルド保有株式の行方からも目が離せない。