代表戦で初テストの「ビデオ副審」、適用された2つのシーンを映像で見る

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先日行われたワールドカップ予選の日本対UAE戦では、浅野拓磨のまさかのノーゴールが大きな話題となった。

この試合でUAEに1-2とリードを許していた日本は77分、右サイドの攻撃から本田圭佑がヘディングで落とし浅野拓磨シュート。ボールはゴールラインを完全に割ったにもかかわらず、得点は認められなかったのだ。

このジャッジについては試合後にヴァヒド・ハリルホジッチ監督も苦言を呈し、本田圭佑も追加副審の不在についてコメントしたと伝えられている。いずれにしても、ワールドカップアジア最終予選における審判のあり方について一石を投じる場面となった。

そんな試合が終了してからおよそ7時間後、イタリアのバーリではサッカー界において歴史的なトライが行われた。イタリア代表対フランス代表の国際親善試合で、ビデオ・アシスタント・レフェリーのセミライブテストが実施されたのだ。

ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)とは、ピッチ上の審判団に加えて、撮影された映像を監視するための副審を追加するという制度のこと。

試合を決めてしまうようなプレーに関して、主審がビデオ・アシスタント・レフェリーに助言を求めることができ、またビデオ・アシスタント・レフェリーにも主審に対してアドバイスする権限が与えられている。

導入に関してはオランダサッカー協会(KNVB)が積極的な姿勢を見せており、今年3月に行われた国際サッカー評議会(IFAB)の年次総会で2017-18シーズンでの導入を目指して実証試験を行うことが決定された。

日本では「ビデオ判定」などとも報じられているが、英語の言葉通りに訳すのであれば「ビデオ副審」と表記するのがベターであり、テニスのチャレンジ制度のように選手(や監督)に行使の権利はない。あくまで審判の判定を助けるためのものであり、最終的なジャッジ権も主審に与えられている。

本来であれば主審はピッチの側に用意されたタブレット端末(あるいは)で自ら映像をチェックすることもできるのだが、今回の試合ではそれを実施せず。そのためFIFAはこの試合を「セミライブテスト」と位置付けており、あくまで導入に向けたセミテストであったとしている。

これまでアメリカなどでテストされてきたこのVARだが、国際親善試合でテスト(セミテストではあるが)が行われるのは初めてのこと。

FIFAがその様子を紹介している。

この日のイタリア対フランス戦は、主審のビョルン・カイペルスと2人のアシスタントレフェリー、1人のフォースオフィシャルに加え、2人のビデオ・アシスタント・レフェリーの計6人オランダ人セットが担当。

UEFAの審判委員長を務めるピエルルイジ・コッリーナも駆けつけ、別室でビデオ・アシスタント・レフェリーの様子を視察したという。

FIFA.comによれば、主審を務めたビョルン・カイペルスは90分の中で2度にわたってビデオ・アシスタント・レフェリーとコミュニケーションを図ったという。実際にそのシーンを見てみよう。

まずは3分のシーン。

この場面ではダニエル・デ・ロッシに対してジブリル・シディベが足を出してファウルに。

主審のカイペルスは笛を鳴らしてゲームを止めたが、映像を確認したビデオ・アシスタント・レフェリーからの助言もあり、レッドカードではなくイエローカードを提示した。

ビデオを用いてはいるが、見ての通りゲームが止まってから最終的なジャッジ(カードの提示)までにそう時間はかかっていない。

2度目のシーンは33分。

コーナーキックをデ・ロッシがヘディングで合わせると、これがフランスDFレイヴァン・クルザワがこれを大きくクリア。しかし、デ・ロッシをはじめとしたイタリアの選手たちはクルザワのハンドを主張しPKをアピールした。

クルザワのクリアがタッチラインを割ると、カイペルスがゲームを一時中断。ビデオ・アシスタント・レフェリーに意見を求め、その結果ハンドではないことが明らかに。試合はフランスのスローインから続行した。

まだまだ試験段階にあるビデオ・アシスタント・レフェリー制度。11月15日に行われるイタリア対ドイツのフレンドリーマッチでも、テスト予定であるという。