(写真提供=SPORTSKOREA)

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リオデジャネイロ五輪開幕前、韓国メディアは男子柔道選手たちを“アベンジャーズ”と呼んだ。リオ五輪を目前に世界ランキング1位まで上り詰めた90kg級のカク・ドンハン(24)、73kg級のアン・チャンリム(22)、60kg級のキム・ウォンジン(24)とアン・バウル(22)らを、マーベル・コミックスのヒーローたちが大集結したアメリカ映画『アベンジャーズ』に例えてそう呼んだのだ。

ただ、韓国男子柔道界の“アベンジャーズ”たちがリオ五輪でことごとく期待外れに終わった。選手全員が、金メダル獲得に失敗したのだ。

彼らが最低2個以上の金メダルを取ると予想していた韓国は、結果的に銀メダル1個(アン・バウル)、銅メダル1個(カク・ドンハン)でとどまった。

日本を意識しすぎた

韓国は当初、柔道強国である日本を意識し、「打倒日本」を目標にしていた。

これは結果論になるが、今となってはそもそも韓国柔道の戦略にミステイクがあったと言わざるを得ない。

というのも、確かに前出の選手たちは世界ランキング1位だが、その一方で彼らは丸裸になっていた。韓国は各階級の上位ランキング8位まで与えられる五輪シード権を確保しようと、リオ五輪まで多くの国際大会に選手を送り込み、ランキングポイントを稼いで順位を上げた。

しかし、韓国選手たちが国際大会で活躍すればするほど、その長短所が外部にむき出しになる。ヨーロッパは韓国選手の戦力分析のため各大会に分析官を送り込んでいたが、韓国はそれも見過ごした。

ランキングを上げてリオ五輪に出場すれば、トーナメント初戦で日本選手との対戦を回避できるためだ。つまり、「最後に日本さえ超えれば金メダルの可能性は十分」と高をくくっていたのだ。

ところが、多くの選手が日本選手と対戦する前に、足元をすくわれることになる。それも前述したそのヨーロッパ勢に、である。

例えばカク・ドンハンだ。ジョージアのバルラム・ リパルテリアニ(27)に敗れたカク・ドンハンは、「去年勝ったことがある選手だったのに、今回は技を駆使するのが難しかった」と感想を残している。

韓国が警戒していた日本選手と対戦したのは、“アベンジャーズ”のうちアン・バウルだけだった。

関係者が語る失敗の原因

韓国柔道の不振の理由は、練習方法にもあった。今回のリオ五輪に向けて、韓国は二人のコーチがそれぞれ3人ずつ選手を受け持って指導したが、柔道中国代表監督を務める韓国のジョン・フンは、韓国メディア『イルガン・スポーツ』の取材に対してこう言っている。

「韓国のやり方で選手たちが2組に分けられてしまうと、いろんな相手と練習試合を行なう機会が制限される。ロンドン五輪の時は各階級の約30人の選手が、毎日一つのグループとして効率よく練習していた」

ジョン・フン監督はロンドン五輪時の韓国柔道の練習法を中国に取り入れて、リオ五輪で中国男子柔道史上初となる銅メダル獲得に貢献しているだけに、このコメントは見過ごしてはならないだろう。

また、自由な雰囲気での練習が選手らの緊張感を低下させという指摘もある。

韓国柔道関係者によると「前回のオリンピックでは、経験と実力を備えた20代後半の選手たちが後輩を引っ張っていた。だがリオ五輪では25歳以下の若手選手がほとんどで、ほとんどがオリンピック初出場。そのため、彼らをまとめられるリーダーがいなかった」らしい。

また、「そのまとめ役を若いコーチらが担当したので、どうしても自由な雰囲気になってしまった。それに、世界ランキング1位という自信がハングリー精神不足にもつながった」と指摘する関係者もいた。

韓国は日本から学ぶべし

興味深いのは、今回のリオ五輪・韓国柔道の不振が2012年ロンドン五輪時の日本柔道と似ているということだ。

『イルガン・スポーツ』は「柔道“アベンチャーズ”没落、解答は2016年の日本」という記事の中で、京都新聞や元柔道日本代表の野村忠宏のコメントを紹介しながら、韓国柔道が日本を参考事例にするよう論じている。

「ロンドンでの失敗をきっかけに、日本柔道協会は大々的な改革を行なった。“切り札”として井上康生を新監督に迎えた。井上監督は豊富な指導者経験をもとに“先輩らしいリーダーシップ”を発揮。韓国のコーチ陣は金メダリストではあるが、指導経験不足が惜しい。日本は、井上監督を中心に男子柔道の新しい世代が生まれた。リオ五輪メンバーに対する評価は低いが、大野将平を発掘したことは大きい。今後は大野を中心にチームがまとまるだろう」(京都新聞関係者)

「ロンドン以降、日本の柔道協会が率先して大きな変化を導いた。代表チームはレスリング、ブラジリアン柔術などを学び、柔道に応用した。これは、昔は想像もできなかったこと。世代交代もうまくいった。また、韓国はもちろん、モンゴル、アゼルバイジャンなど、新興制力の戦力を徹底的に分析した。そのためには莫大な費用と人員が必要だが、日本柔道協会は積極的に支援した」(野村忠宏)

ロンドンでの屈辱を晴らすために、柔道宗主国というプライドに奢ることなく、監督交代や戦力分析、サポートも惜しまなかった日本柔道会。

今回のリオ五輪で、日本は柔道で4個の金メダルを獲得し(11日現在)、“世界最強”のプライドを取り戻した。リオ五輪での結果を見る限り、韓国柔道界も日本のような改革が必要となりそうだ。

(文=S-KOREA編集部)