冬のボーナス増額も「生活給の一部」に回ってしまうのか

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 そろそろ年末年始の「出費計画」を立てる時期。冬のボーナス額に期待を寄せるサラリーマン家庭も多いはずだ。

 経団連が10月30日に発表した年末ボーナス(賞与・一時金)の1次集計によれば、大手企業(従業員500人以上の245社)の平均額は、前年比3.13%増の91万697円で過去最高レベルだという。

 また、民間調査機関の労務行政研究所が東証一部上場企業199社を対象に行った同様の調査(10月16日発表)でも、前年同期比3.7%で2年連続の増加となる73万2888円を記録。〈2008年のリーマンショック以前の水準に近づきつつある〉と分析している。

 こうした調査数字だけ見れば、「大企業を中心に賃上げ傾向が続き、いよいよ景気回復が本格化している」ということにもなろうが、“額面通り”に受け取るわけにはいかない。事実、労務行政研究所の編集部担当者はこんな補足コメントをする。

「年末一時金とはいえ、多くの企業が春闘の労使交渉で夏・冬を合わせたボーナス支給額を決めているのが現状です。今年の春先は円安の恩恵を受けて輸出企業の業績が軒並み回復していましたし、日経平均株価も好調に推移していたので、ボーナス額が高水準だったことは事実です。

 ただ、夏以降は中国株式市場の混乱や、米国の利上げ観測など不安要素も出てきたために、世界経済の先行きに慎重姿勢を見せる企業も増えてきました。国内でも株価や物価動向が不安定な状況になっています。そう考えると、来年以降も手放しでボーナス額が増える保証はありません」

 しかも、近年は「年功序列型」に代わり、「業績連動型」で賞与が自動的に決まる企業が増えているため、企業業績の浮き沈みがボーナス額に直結してしまう。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は、業績連動型のデメリットについて、こんな指摘をする。

「業績連動型の賞与を導入する企業の多くで、基本給が反映されるのは半分以下、あとは会社業績だけでなく部門業績も加味されます。好業績を叩き出している企業の中には、儲かっている今のうちに将来の事業を見直して部門を縮小させようとするケースも出てきます。そうなると、ボーナス額も増えないことになります。

 また、業績連動は月給の少ない若手の組合員に“下限”が設けられている一方で、管理職層と呼ばれる中堅クラス以上には適用されない場合が多いため、業績が悪くなればボーナスもゼロに近くなります」

 今年、不正会計問題が発覚し、2016年3月期上期(4〜9月)で6年ぶりとなる営業赤字(904億円)に見舞われた東芝の賞与も、社内カンパニー業績などが組み込まれた業績連動型だ。

「夏のボーナスで未払いだった業績連動分が冬に上乗せされる予定ですが、ここまで会社が傾いているので、金額はまったく期待していません。今後は半導体部門だけでなく家電部門にもメスが入れられる方向なので、今後はボーナスどころの話ではなくなると思います」(30代・東芝社員)

 東芝のような不祥事企業でなくとも、来年、再来年のボーナス額をアテにして家計をやりくりするご時世ではない。前出の溝上氏が続ける。

「いまやボーナスも“生活給”の一部。賃上げが進んできたといっても大企業ばかりで、いまだに基本給自体が変わらない中小企業もたくさんあります。上がらない給料をボーナスで補っている家庭が多い中、年末年始にパーッと散財する気分になれないのが現実ではないでしょうか」

 11月9日、厚生労働省は物価の伸びなどを考慮した9月の「実質賃金」が3か月連続で前年同月比を上回ったと発表した。

 これは働く人1人あたりの月給や賞与など「現金給与総額」をもとに弾き出された数字だが、「非正規雇用の増加や、残業時間の積み増し分なども影響するため、国民の給料・ボーナス水準が押しなべて上昇しているとは言い難い。むしろ賃金格差は拡大している」(大手シンクタンク調査員)との見方は根強い。

 さて、今冬のボーナス商戦で個人消費をどれだけ喚起させられるか。