年収が増えるにつれて、40インチ以上のテレビを所有する傾向は顕著になっていく。特に超大画面テレビ(ここでは50インチ以上)の場合、年収1000万円の所有率は、年収300万円台の所有率の2倍以上である。

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マンションより一戸建て。軽自動車よりSUV。洋服を買うならファストファッションよりデパートで……。高年収世帯が冒しがちなムダ遣い、見栄消費を総点検。本当に満足度の高いお金の使い方、教えます。

家電製品の場合、目新しい機能などにひかれて、「まだ使えるけれどもついつい買い替えてしまう」という人は多い。インテリア&家電コーディネーターの戸井田園子氏によると、そんな人にありがちな失敗として、以下のようなものがある。

たとえば、全自動洗濯乾燥機の場合。「乾燥機は電気代もかかるし、乾燥シワもまだまだ気になる。結局、自分で外や室内に干すことが多い」。調理家電の場合。「人気の新製品に飛びついたが、実際に使ってみると、それなりに手間がかかって長続きせず、結局キッチンの収納にしまったままになっている」。

実際に使って初めて、その不便さや、ムダに気付くというケースは珍しくないものだ。

テレビ選びの失敗で多いのは「ムダな大きさ」と「オーバースペック」(過剰な機能搭載)だ。たとえば、「ホームシアターにしてみたものの、結局、映画は映画館でゆったりと観たほうがよいと気づいた」「部屋に対して大きすぎるテレビを購入したが、所有欲を満たしただけで、狭いリビングに設置するとかえって見にくい」など。

単価の高い家電は、買い替えがききにくく、選択ミスはダメージが大きい。そこで、戸井田氏に「本当はこれくらいで十分」という、家電選びの基準を挙げてもらった。

【基準1】家電に対する自分のこだわりを書き出してみて、上から3つを満たせれば十分。
【基準2】新機能を搭載したものを買う場合、使用中の家電に、プラス1つ、2つの機能に留めるほうがよい。
【基準3】機能も大事だが、デザインも大事。気に入らないデザインだと愛着がわかず、あまり使わなくなることもある。少々予算オーバーでも、デザインが気に入ったものであれば、買うのは「アリ」。

具体的なスペックで考えると、「たとえば炊飯器の場合、4人家族ならIH式で5.5合炊き。内釜のつくり、または炊き方が最上位モデルと同じ仕様(三菱なら“本炭”が最上位なので、“炭”を名乗っているものを選ぶ)。目安として最上位の半額程度の価格帯のものまでなら合格ラインで、ハズレはないはず」(戸井田さん)とのこと。

FP・山口京子氏も、家電の買い替えについては「慎重派」である。

「最近で言えば、2014年4月の消費税増税前に大型家電を駆け込みで購入する人が一部に見られました。しかし実は、増税後のほうが商品の価格は軒並み落ちたという事実もあります。消費税が10%に引き上げられる際も、再び買い替えキャンペーンが見られるかもしれませんが、十分に検討してほしいと思います」

山口氏が、買い替えの目安としてすすめるのは「今使っている家電が、省エネ仕様かどうか」という点である。

機種によっては、古い家電は、新しいものより電気代がかさむことがあるという。

「省エネ製品買換ナビゲーション『しんきゅうさん』(http://shinkyusan.com)では、購入予定の製品の年間の消費電力量・電気代などのコストを簡単に比較することができます。家電の中でよく電気を使うエアコンと冷蔵庫など、見積もってみると思わぬムダに気付くかもしれません」

■隣の出費診断!
[A家]Appleマニア vs [B家]無頓着 vs [C家]TV、炊飯器なし

[A家]iPad2台、iPad mini2台、Mac3台

……夫35歳/妻35歳/長女4歳/年収約1300万円(妻100万円)

広告代理店勤務のAさんは、映画ファン。52インチのテレビを持ち、衛星放送「スカパー!」にも加入している。「大画面テレビは字幕が大きいので読みやすい」と話す彼は、熱烈なアップルファンでもある。「発売と同時に買う」というモットーのおかげで、自宅にはMacのノートPCがサイズ違いで3台、iPadが2台、iPad miniが2台、そしてiPhoneがある。そんな彼にも堅実な一面はあり、テレビを買うときは、量販店で実際に商品を確認してから、「価格.com」で最安値の商品をネット購入するという。新規家電購入費は、年間約20万〜30万円だそうだ。

[B家]流行に流されず、「なくて済む」ものは買わない

……夫35歳/妻35歳/長男6歳/次男1歳/年収約900万円(妻100万円)

Bさんは大学時代を“テレビなし”で過ごすほど、周囲に流されないタイプ。モノ持ちがよく、電子レンジや冷蔵庫を15年間使った経験もある。同僚がタブレットPCを愛用していても「なくても済む」と関心を示さない。家電を買うときには、明確な理由がある。「ボーズ」のコンポは、「夫婦揃って音楽が趣味だから」。「エレクトロラックス」の掃除機は、「自立する点と、色が気に入ったから」。テレビは家電量販店の店員の助言に従い、32インチにした。「家電以外は財布の紐が緩くなる」と控えめに語るBさんだが、「財形貯蓄」と「学資保険」で将来に備えており、堅実派といえる。

[C家]掃除機ではなくほうき、エアコンではなく氷枕

……夫34歳/妻32歳/長女4歳/長男1歳/年収約2000万円(妻1000万円)

Cさんは、テレビを持たない。理由は「家族のプライスレスな時間が増えるから」。電子レンジや炊飯器も持たず、土鍋や圧力鍋を使って米を炊く。掃除機ではなく、ほうきを活用し、エアコンには頼らず、夏場は氷枕を活用したり、濡れタオルを首に巻いたりして過ごす。冷蔵庫はほぼ使っていないため、今夏の「リストラ候補」だ。洗濯機や車は活用しているので「オール非電化」というわけではない。

「どうすれば、“不便さ”をしのげるかを考えることが楽しい」とCさん。その暮らしは「節約」といった概念とは異なる次元の、心豊かに生きる術でもある。電気代は家族4人で約2900円だ。

■FP山口京子さんの結論●家電に頼らない生活で、不景気でも生き残れる

Cさんの場合、家電製品に頼らず、豊かな生活を楽しんでいる点が素晴らしいですね。どんな時代になっても、力強く生きていけることでしょう。

「お金をかけずに暮らす」ということは、景気の動向などに影響を受けにくく、健全で、とてもよいことです。家電は、エアコンと冷蔵庫が最も電気を使います。エアコンは不使用、冷蔵庫もリストラ検討中という点は、お見事ですね。Bさんの堅実な消費態度も、模範的といえます。

特筆すべきはAさんの事例です。Aさんの消費動向からは、非常に“バブル”な印象を受けます。職業柄、最先端の家電に目を配る必要があったり、マック製品がお好きなのもわかりますが、そろそろ貯蓄を検討されたほうがよいかもしれません。お子さんも小さいことですし、これから支出が増えてくると、高年収といえど、限界がくるでしょう。体を壊す可能性もゼロではありません。さして必要でもないのに新製品を買いたくなったら、「病気になっても傷病手当は1年半しか出ない」ということを思い出してみてください。

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ファイナンシャルプランナー 山口京子(やまぐち・きょうこ)
名古屋市生まれ。フリーアナウンサーから上京を機にFPに転身。テレビ、ラジオ、雑誌などで活躍。著書に『5ステップで貯まらん人を脱出 FP山口京子式 家計簿いらずの貯まるお財布メソッド』『「そろそろお金のこと真剣に考えなきゃ」と思ったら読む本』など。

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(山守麻衣=文・構成 向井渉=撮影)