先日、李龍徳(イ・ヨンドク)の文藝賞受賞作『死にたくなったら電話して』(河出書房新社)についてここでご紹介したが、こちらの金子薫『アルタッドに捧ぐ』(同)も、同じ回の文藝賞受賞作だ。主人公の本間は、小説を書いている。主人公はエニマリオ族の少年モイパラシアだ。ところが、本間の書きかけの小説の主人公モイパラシアは、作者・本間のあずかり知らぬ形で、ソナスィクセム砂漠の南西部で貨物列車に轢かれて死んでしま