『精選女性随筆集宇野千代大庭みな子』(宇野千代大庭みな子小池 真理子 選) 宇野千代は、八十歳を迎えて刊行された自身の全集(一九七七~八、全十二巻、中央公論社)の最終巻の「あとがき」を、次のように結んでいる。 私は自分のことを、小説家ではなく、随筆家かと思っている、と書いたが、小説であれ、随筆であれ、確固たる哲学的思惟なしに書けるものかと言う気がする。この点で自分は、文学者として欠