蝶の羽ばたきだけで、世界は一変する、と、頭でっかちが言う。だが、それは、まったくのウソだ。現実の必然性の濁流は、すべてを飲み込んでしまう。川の水路で無理やりねじ曲げてみたところで、結局は、もとどおりの海に流れ込むだけ。作り話でならなんとでも作れるが、実際は、玄関を右足から出ようと、左足から出ようと、そんなことは、今日一日、それどころか、家のすぐ先の角を曲がるまでにすら、まったく影響を残さない。 我