食に好き嫌いが人それぞれあるように、食に対するコンプレックスも人それぞれ。そんな「食事」をテーマにした短編連作集が『キッチン・ブルー』(遠藤彩見著、新潮社刊)だ。■人と一緒に食事ができずに苦しむ主人公「食えない女」の主人公である灯は、人前で食事ができない。摂取できるのは液体だけ。咀嚼が必要なものは一切、喉を通らない。無理に詰め込めば戻してしまう。幼いころから、視線を感じると食べものが喉につかえてし