シートで製麺後、薄く伸ばしワンタンに。好みの厚さでプリプリの皮が楽しめる。

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2014年6月に発売され、「自宅で生麺がすぐに作れる!」と話題になったフィリップスの「ヌードルメーカー」。これまでパスタメーカーなどを渡り歩き、台所を粉まみれにしてきた麺マニアの筆者もそのニュースを聞くなり即予約してゲットした口だ。

なにが驚いたって、まずその価格。当時、毎日パスタを自分で作って食べたというよくわからない衝動にとりつかれ、業務用の30万円の押し出し式パスタメーカーをため息混じりに眺めていた筆者にとって、実売3万円以下の本製品は、1/10の価格でやりたいことを網羅していたのだ。まぁ迷う余地はなかった。

でも、普通のご家庭にとって3万円の調理器具をサクッと買うのは勇気がいる行動なのも事実。今でも購入したいけれど実際のところどうなの? と感じている人も多いはず。今回は購入してから半年以上ヌードルメーカーを使ってみての感想を「使いやすさ」、「制作できるバリエーション・楽しさ」、「味」の3つに分けてガチンコレビューしてみたい。

「ヌードルメーカー」は炊飯器並みに簡単というのは本当?


麺の製造自体は炊飯器なみと言ってもいいかと思う。原料のセットも基本的に小麦粉や塩などをヌードルメーカーにセットして分量にあった水分を適宜注ぐだけ。難点は、水分を注ぐのは自分の手でしなければならないので製麺時間は実質ずっと横で待機しなければならない点。

また、粉のこね時間(8分程度)のあとの麺の押し出し時間も横について適当な長さで切りわけて打ち粉になじませ一人前づつ取り分ける必要があり、こちらもほっておけない。結局、ヌードルメーカー稼働時はこね・製麺時間合わせて15分程度はかかりっきりになる。

米の炊飯は、丁寧に作ろうとすると米のとぎ時間と米の放置時間、そして炊きあがってから一旦米を混ぜての蒸らし時間が必要で1時間弱はかかる。そのうち炊飯時間の40分弱は目を話すことができるのは大きなメリットだが、研ぎや蒸らしを考えるとヌードルメーカーが特別手間がかかるとは言えないかなあという程度には手軽だ。ローラー式のパスタメーカーや、周囲を粉だらけにする手での製麺に比べれば衝撃的なまでに便利なのは間違いない。

ただし、製麺後の後始末まで考慮に入れると、炊飯器の手軽さと比べると結構大変と言わざるをえない。

かなり考えられた構成でパーツ数が少なく仕上げられているが、ニーダー(こねる金属製のハネ)や、押出部分の金具にアタッチメントと洗浄が必要なパーツはそれなりにある。とくにアタッチメントは一度冷凍庫で麺の生地ごと冷凍し、固まったところを取り出すという手間が必要だ。

感覚的な面倒さはフードプロセッサーを使った後の洗浄に近い。製麺という行為からすれば非常に簡便で便利だけど、毎日つかうにはちょっと面倒というところだ。

筆者は、ヌードルメーカーは欲しいけれど日常的に使っていけるかわからなくて不安という人には、家庭用パンメーカーを日常的に使っているなら大丈夫。3ヶ月だけ使って台所の片隅に放置しているならやめておけとアドバイスしている。購入時の参考にして欲しい。

ちなみに筆者は数キロ単位でまとめて製麺することで、毎回の手間を省いて作りおきすることにしている。

バリエーションは? 使っていて楽しいか?


ヌードルメーカーは、付属のアタッチメントや別売りで、さまざまな種類の麺の細さや形状が選択できる。中が空洞のマカロニ・ペンネや1.3mm程度の極細麺も実現できるのが特徴。平麺のバリエーションも標準装備だ。もちろんローラー式のパスタメーカーの得意分野である餃子の皮やラザニアのシートにも対応している。

この麺の種類を選べるのは、使いこなす中で非常に重要で、「ヌードルメーカー」を買ってよかったなあと実感できるところだ。

このようにバリエーション豊かな麺の種類を実現できるのは、押し出し式を採用しているから。これまでのローラー式パスタメーカーでは絶対に出来なかった中か空洞のペンネができた時の感激は忘れられない。30万円代で数十キロの業務用パスタメーカーを購入した後に、数万円の別売りダイスを買わなければできなかった機能が実現されているというだけで文句なく買い、だろう。

同じ小麦粉や水分量でも、麺の形が違えば歯ごたえや印象が全く変わるという楽しさは無条件にワクワクできる。購入後半年以上がたった今でも、どの麺が作ったソースに一番合うかなどを試行錯誤するのは飽きないところだ。

「ヌードルメーカー」で作った麺は本当に美味しいの?


「ヌードルメーカー」発売当初、さまざまな媒体やウェブサイトで実機レビューが掲載され、絶賛されたのがこの味の部分。

しかし、製麺用に特別に作られた小麦粉でなく家庭用の小麦粉を使った結果、プロの作った麺とくらべて絶賛するほど美味いのか? という部分はやっぱりいくらか“自作だから”というバイアスがかかっていると感じる。

数回のイベントとして製麺した結果としてならヌードルメーカーは、満足度に見合った美味しさを提供してくれる。ただ、半年間つかって、日常のご飯の1風景になったときに感じる印象は少し異なる。

まずは、発売当初もっとも絶賛されたうどんのコシ。はじめは作りたてはコシが強いな! と喜んでいたが、これはきっと粉への水分浸透が足りていないところから生じるものだろう。

食べ続けると、“つるつる”というより“ゴリッゴリッ”という食感が気になってきた。手打ちうどんが生地の寝かせも含め数時間かけて製麺するのを10分で作るのだから仕方ないが、手放しでコシが強いと褒める気にはなれないのも事実。製麺後すぐに茹でると麺が短くちぎれてしまう割合も増える。
これは、製麺後十分な打ち粉をして冷蔵庫で一日ほど寝かせると大分改善する。

とは言え、作りたての麺でもスーパーで購入できるすでに茹でたうどん玉よりもべたつかず美味しいことは確か。冷凍うどんや、外食店のさぬきうどんなどに比べればの話だ。結局筆者は、「ヌードルメーカー」導入後も冷凍庫に冷凍うどんを常備することは続行中だ。
冷凍うどんの価格のやすさと手軽さ、美味しさはやっぱりちょっとスゴいんですよね……。

多分、従来の製麺方法で大きな圧力が求められたり、十分な寝かせ時間が設定されている麺については「ヌードルメーカー」はあまり得意ではないのではないか。中華麺も同じ傾向を感じる。

そのかわり、パスタやそばなどは得意と言ってよいように感じる。こちらは手でこねる製麺方法が一般的に紹介されている麺だ。パスタは、「ヌードルメーカー」と同じ押し出し式がメーカー品でも主流の製麺方法でもある。それに、自宅では1.3mmやペンネなどの製麺は困難なので「ヌードルメーカー」のアドバンテージは歴然だ。

また、もうひとつのおすすめであるそばは、手で製麺するのがかなり困難で、そば粉も新鮮さが命という、趣味の中でもかなり高難度なモノだけに手軽に作れるヌードルメーカーは大きなアドバンテージだ。作りたてが味に直結するそばはうってつけに思える。

その考え方をすすめると、そばの柚子きりや茶そば、ほうれん草のパスタなど、風味を楽しむ麺はまさにヌードルメーカーの独壇場。スーパーなどでも手に入りにくい麺を手軽に家で作れるという「たのしさ」と、香りや風味の新鮮さ味に直結するタイプの麺のつくりたてを楽しめる「美味しさ」が両立しているのがこれらのバリエーション麺だ。

まとめると、
・うどん、中華麺など、従来から手間がかかる麺はヌードルメーカーでも工夫が必要
・パスタ、そばなどは得意。とくに、風味を楽しむ麺はオススメ
ということになる。

結論として、筆者は「ヌードルメーカー」購入を後悔していない。が、これから購入を考えている人には、自分が他の料理の時にフードプロセッサーを使うのにまったく抵抗を感じないか、パンメーカーを日常的に使えているかをまずチェックして欲しい。
その次に、自分が作りたい麺がパスタやそば、変わり種のアレンジ麺のほうに主眼がある方が「ヌードルメーカー」の真価を発揮することができるだろう。
(久保内信行)