中国政府・住房和城郷建設部(住居と都市農村建設部)の元副部長で、中国土木工事学会理事長の郭充冲氏によると、中国の28都市で、地下に水などを漏れさせているビルの割合は57.51%で、重慶市や無錫市(江蘇省)では100%のビルで「漏れ」が発生していたと述べた。ビルから地下に漏水を発生させると、地下に空洞が発生するなどで事故の原因になりかねないという。中国新聞社が報じた。

 このほど開催された「地下への滲漏(しんろう)に注目、建築工事の質の向上」どのテーマによる座談会での発言。郭会長は中国建築防水協会と北京零点市場調査と分析公司が共同で発表した「2013年全国建築滲漏状況調査項目報告」(以下「報告」)も引用して説明した。

 中国では都市化の進行とともに、地下空間の利用も盛んになっているが、ビルから地下に、水が漏れ出す現象が極めて多い。「報告」によると、全国28の都市で、建築物2849棟を調査したところ、全体の57.51%に相当する1022棟で地下への「滲漏現象」が発生していた。重慶市や無錫市では発生率が100%だった。

 郭会長によると、「滲漏現象」は主に、水道管で発生している。中国における水道管からの「漏水率」は2013年、15.49%だった。本来ならば対策をするなどで低下させねばならない数字が、2010年に比べて0.2ポイント上昇していた。

 郭会長は、水道管の「漏水率」は先進国の場合8%-10%と説明。中国で同数字が高い理由として、工事技術の水準が低いことに加えて、管理がしっかりしていないことを挙げた。特に、古い水道管での水漏れが目立つという。

 建築物の地下から水が漏れ続けた場合、水流がゆっくりと土砂を押し流し、大きな空洞が発生する恐れがある。最悪の場合には、建物が傾いたり破壊される可能性も否定できないという。(編集担当:如月隼人)
**********

◆解説◆
 日本の都市は水道の漏水率で「驚異の低さ」を達成している。世界的にはパリ(5.0%)、ベルリン(同)、ソウル(6.3%)、モスクワ(9%)などが比較的漏水率が低い都市だ。漏水率の高い都市としてはメキシコシティー(35.0%)、ロンドン(26.5%)、イスタンブール(25.2%)などがある。

 一方、日本では最も低い福岡市(2.6%)をはじめとして、名古屋市(2.7%)、東京都(2.8%)、札幌市(3.0%)、広島市(3.4%)など、いわゆる地方都市を含め、漏水率は極めて低い都市が多い。(国外都市は2008年、国内は11年度の統計。いずれも福岡市HPによる)。

 中国では、だれも気付かないまま長期にわたって継続する「小規模」な漏水も多いが、水道管が“大爆発”して街を水浸しにする事態も、時おり発生している。

 2010年には河南省鄭州市内で発生した、道路地下に敷設された太い水道管が破裂した事故では、大量に噴出した水が近くの浄水場の地下ポンプ室に流れ込み、機械類がショートした結果、水の噴出がやっとおさまった。水が噴出した道路には、直径約8メートルの穴が残ったという。(編集担当:如月隼人)