ジャマイカ(1−0)、ブラジル(0−4)との2連戦で、日本代表はまさに天国と地獄を味わった。

ジャマイカは想像以上に歯応えのない相手で、試合開始直後から日本が攻めに攻めまくって、シュートを20本も放った。得点はオウンゴールによる1点のみで、決定力不足という課題を残したけど、選手たちは気持ちよくプレーできただろうし、アギーレ監督も3戦目にして未勝利というプレッシャーから解放された。

問題はブラジル戦だ。ブラジルは日本戦の3日前に、中国でアルゼンチン相手に激しい試合(2−0でブラジルの勝利)をしている。一方、日本はジャマイカ戦から中3日。コンディション面は日本が有利だった。

また、試合内容も決してブラジルは絶好調ではなかったのに、まるでプロと高校生というほど力の差を見せつけられた。ピッチの状態が良かったら、さらに失点を重ねていてもおかしくなかったね。

ただし、そんなに悲観する必要はない。なぜなら、今の日本代表の力がこの程度だということは、惨敗した6月のブラジルW杯ですでにはっきりしていたことだからだ。

監督が代わり、メンバーも入れ替わったからといって、急に強くはならない。大事なことは、今のままでは世界で勝てないということを、日本サッカー協会も選手もメディアもファンもしっかりと認識することだ。

特に、アギーレに抜擢(ばってき)された代表キャリアの浅い選手たちにとって、ブラジル戦はいい経験になっただろう。

例えば、最近注目を集めているMFの柴崎。彼は近い将来の日本代表の中心を担うべき選手だけど、ブラジル戦では持ち味を発揮できず、失点につながるミスをしてしまった。今までJリーグではあんなプレッシャーを受けたことがないはず。普段からもっと高いレベルでのプレーをしないと、世界の強豪には通用しないことがよくわかっただろう。武藤、森岡、田口、太田、塩谷らほかの“新顔”も同様だ。

ただ、ひとつ言わせてもらえば、せっかくのブラジル戦なのに、チャンスをもらった選手たちから、闘う姿勢があまり見えなかったのは残念だったね。確かに、ネイマールはすごい選手だよ。簡単には止められない。でも、そんなこと最初からわかっているはず。だったら、体を張って、ファウル覚悟で止めにいかなきゃダメだよ。なのに、日本はイエローカードの一枚ももらわなかった。

ブラジル戦で、そういう気迫が伝わってきた選手は岡崎くらいだ。彼は相手がどこであろうと、いつも体を張ってゴールに向かう。あの闘う姿勢を全員が見せること。それは世界で勝つための大前提になる。

格下相手の興行的な色合いの濃い試合ばかりだと、すぐに「日本は強くなった!」と錯覚してしまう。そういう意味で、0−4と大敗したものの、世界との差を肌で感じられたブラジル戦には大きな意義があった。すべての強化試合を格上相手と行なうのは難しいにしても、今後も年間4、5試合程度は強豪国と対戦する機会をつくりたいところだ。

もっとも、いつまでも強いチームと対戦するだけで満足しているようでは成長がない。選手、監督、協会がその差をどう受け止め、どう強化につなげていくのか。ある意味、永遠の課題だね。

(構成/渡辺達也)