秋は食べておいしい、見てかわいい、キノコで決まり!

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残暑もようやく落ちつき、涼しくなってきた。そろそろ旅行でも行きたいと思っていた矢先に出会ってしまった本が『きのこ旅』である。
きのこグッズを集めるようになってから、実物も見てみたいと思う気持ちも育ってきていた。そこでぴったりの本に出会ってしまったのだ。読むしかないではないか。

本書は、7つのモデルプランとオススメスポット、きのこ狩りのノウハウにきのこグッズの紹介まで、すべてフルカラーで紹介している。独特なフォルムもさることながら、思いのほかさまざまな色をしているのもきのこの魅力なので、フルカラーなのはうれしい。写真も、これでもかとたくさん載せてくれている。
表紙の裏がきのこ柄であったり、細かい所まできのこのモチーフを使っていたり、どのページを開いてもかわいく、乙女心をくすぐるデザインで、旅のお供に持ち歩くのも楽しくなりそうだ。
読めば読むほど、著者はきのこが大好きなのだと感じる作りでうれしくなった。

『きのこ旅』では、出会いたいきのこに適した季節がわかるきのこカレンダーも掲載されているが、これからの季節におすすめな旅のプランを、きのこ愛にあふれる著者・とよ田キノ子さんに伺ってみた。
「やはり、一番は長野県プランをオススメします。見る、食べる、泊まる、買う、採る(撮る)という要素が盛り込まれていますが、この時期の長野は特に『採る(きのこ狩り、きのこ観察)』の充実が期待できます。ペンションきのこさんでのアクティビティもそうですが、きのこ公園として紹介している『やぶはら高原こだまの森』周辺でも、きのこ観察ができます。また、食べられる天然きのこの種類も増える時期なので、エブリコさん(※軽井沢にあるきのこ専門のフレンチのお店)で提供されるきのこ料理でも、多くの種類のきのこがいただけると思います」
長野県プランは1泊2日のコース。週末旅行にちょうどいいスケジュールだ。コースに含まれるエミール・ガレ「ひとよ茸ランプ」が見られる北澤美術館も気になる。

また、「ペンションきのこ」はきのこ好きが集まる場所ということで、とよ田さんもあこがれの場所だったそう。
「私がきのこ好きを自覚してから買い集めた本に度々登場していた『ペンションきのこ』さん。『きのこ旅』内にも書きましたが、オーナーの小宮山さんがきのこに関する書籍を多く出版されているということもあり、菌類研究者から、写真家、画家まできのこに魅了された多くの“濃い”方たちが集まる場所です。『ペンションきのこ』さんに限らずですが、きのこという共通の話題で盛り上がれる場所というのはまだ限られていますので、こういう濃厚な時間を過ごせるのはとてもぜいたくでかけがえのないことだと思っています」

きのこを「採る」体験はまだないのだが、採ったら食べてみたくなるのが人情……。とよ田さんが今までに食べたなかでおいしかったきのこはなんだったろうか?
「天然きのこは栽培ものに比べどれも味が濃く、おいしいきのこはたくさんあるので、その中で『コレ!』と決めるのは難しいのですが……。最近食べたきのこのなかでは、オオツガタケがとてもうま味が強くおいしかったです」
オオツガタケを調べてみたところ、シイタケくらいのサイズでぬめり気のないなめこのようだった。
「全般的に、きのこは油との相性が良いので、油のおいしいお肉(私は豚バラが好みです)やバターなど、動物性の油と合わせると間違いありません! ちなみに、我が家では、この時期はいろいろな種類のきのこを採ってきて、きのこ汁にするのが定番です。入れるきのこの種類が多いほど、複雑なうま味が出てとてもおいしいです。」肉ときのこの組み合わせは、鉄板のようだ。汁物はご自宅のそばできのこ狩りをすることができるとよ田さんならではの食べ方だ。どちらも食べてみたい。

近くできのこを観察できる環境にいるとよ田さんは、きのこの写真をよく撮影されている。今回はその中でもお気に入りの一枚をご紹介いただいた。

名称:ベニテングタケ 撮った場所:岐阜県 季節:10月上旬 
「私にとって(おそらく多くのきのこ好きな人にとっても)、ベニテングタケは特別なきのこです。毒きのこですが、色も形も完璧な美しさがあり、それ故か、海外でも言い伝えや信仰などの文化にも結びついています。ヨーロッパでは幸運のシンボルといわれ、ラッキーアイテムとしてベニテングタケをモチーフにしたグッズが愛されています。この写真は私が今まで出会ったベニテングタケの中でも一番の美人さんだったので、気に入っている一枚です」
私もいくつかグッズを持っているべニテングタケ。たしかにかなりの美人さんだ。私も今回の旅で実際に出会えないか……と思ったが、きのこカレンダーを見た所、ピークは9月中旬までとのこと。すこし遅かったようだ。

最後に、きのこ旅に興味を持った方へのメッセージもいただいた。
「きのこは、食べるだけでなく、鑑賞したり、撮ったり、愛でたり、採ったりと、多角的に楽しめます。今はインターネットで多くの情報を得られますが、その場に行って体験してみないとわからないことはたくさんあります。一歩踏み出して、五感で思いっきりきのこを楽しんでみてください。さらにきのこのことが好きになるはずです。そして、きのこ旅の旅先ではぜひ胞子のように“金(きん)”を振りまいてください。その“金”で、地元の“菌(きん)”が豊かに潤い元気になってくれたら……きのこが取り持つ相互にとってのハッピーが菌糸のように広がっていったら、とてもすてきなことだなと思っています」
これからの季節もまだまだ楽しめるきのこ。コース以外のスポットも紹介されているので、週末にちょっと遊びに行くのもいいだろう。やっぱりきのこグッズに心ひかれてしまうが、今年はきのこ狩りにもチャレンジしたい。
不思議で魅力的なきのこたちに癒やされたら「金」を落として帰ろう。「金(菌)」が育って新たなスポットが生まれるかもしれない。
(会田芽穂/boox)