海外赴任にあたって赴任先の生活水準は、赴任者にとっても人事部にとっても大きな関心事だ。国によって物価も貨幣価値も違うのに、同レベルの生活水準の維持するのにはその国の物価水準だけでなく、経済における為替や社会の安全が大きく影響を与える。組織・人事コンサルティング会社のマーサーは、「2014年世界生計費調査」を取りまとめ、結果を発表した。

　調査の結果、アフリカの2都市が上位を占めた。概して他の都市と比べて豊かな都市とは言えないアンゴラの“ルアンダ”が2年連続世界で最も物価が高い都市となり、その後にチャドの“ンジャメナ”が続くという結果となった。次いで、アジアとヨーロッパの都市が引き続きランキング上位を占め、3位に香港、4位にシンガポール、5位にチューリッヒ、6位にジュネーブが続いている。東京は昨年から順位を4つ下げて7位となった。

　地域別に見てみると、米国の都市は、他の地域の都市が大きく順位を下げたことに加え、米ドルがその他の主要通貨に対して相対的に安定したことにより順位を上げた。この地域で最も順位が高い都市であるニューヨークは、住宅賃料の上昇により順位を8つ上げて16位となった。ロサンゼルス(62位)は昨年から順位を10、サンフランシスコ(74位)は18上げている。

　カナダの都市は今年順位を下げている。カナダで最も順位が高いバンクーバーは、順位を32下げ96位となった。「ナダドルが米ドルに対し大きく下落したことが、今年のランキングで順位を落とした要因となった。

　ヨーロッパの4都市は、昨年に引き続いて最も物価が高い都市トップ10にランクインした。最も高い都市はチューリッヒ(5位)で、その後にジュネーブ(6位)、ベルン(8位)でスイスの３都市がトップテン入り、 モスクワ(9位)が続いている。ヨーロッパの上昇について同社では、「多くのヨーロッパの都市では物価上昇が緩やかであるにも関わらず、現地通貨の対米ドル価値がわずかに上がったことにより、順位を上げた。さらに、賃貸住宅への需要増大による住居費の上昇が、いくつかのヨーロッパの都市の順位を上げた要因になっている」と説明している。

　一方で、大部分の東ヨーロッパや中央ヨーロッパの都市は、現地通貨の対米ドル価値の下落により順位を下げた。

　アジアでは4都市がトップ10にランクンした。この地域で最も物価が高い都市である香港(3位)は、昨年より順位を3つ上げた。4位には昨年から順位を1つ上げたシンガポール、その後に昨年より順位を4つ下げた7位の東京が続く。日本の都市は、円の対米ドル価値下落により順位を下げた。

　オーストラリアの都市は、現地通貨の対米ドル価値の下落により今年のランキングにおいて大きく順位を下げた。オーストラリアで最も海外駐在員にとって物価が高い都市シドニー(26位)とメルボルン(33位)は共に順位を17下げ、パース(37位)は19下げた。

　ムンバイ(140位)はインドで最も物価が高い都市であり、その後にニューデリー(157位)とチェンナイ(185位)が続いている。バンガロール (196位)とコルカタは(205位)はインドで最も物価が低い都市となっている。

　その他のアジアの都市では、パキスタンのカラチ(211位)が、昨年に引き続きアジアおよびグローバルで海外駐在員にとって最も物価が低い都市となった。

　アフリカの多くの都市は、海外駐在員の高い生計費を反映し、引き続きランキング上位に入っている。1位のルアンダ、2位のンジャメナその次に、セーシェルのビクトリア(13位)、ガボンのリーブルヴィル(19位)が続いている。

　アフリカの２都市が上位に入っている理由について、「ルアンダとンジャメナは相対的に物価が低い都市だが、輸入品が非常に高価なため、海外駐在員にとっては物価が高い都市となった。また、海外駐在員の基準を満たす安全な住居を見つけることは、困難、かつかなりの費用がかかる」と同社では指摘している。

＜海外駐在員にとって最も物価が高い都市ランキング＞
1位　ルアンダ（アンゴラ）
2位　ンジャメナ（チャド）
3位　香港（中国）
4位　シンガポール（シンガポール共和国）
5位　チューリッヒ（スイス）
6位　ジュネーブ（スイス）
7位　東京（日本）
8位　ベルン（スイス）
9位　モスクワ（ロシア）
10位　上海（中国）

　調査は、ニューヨークをベースとし、ニューヨークを100とした場合の、各都市の指数を比較。基軸通貨は、米ドルとしている。5大陸211都市において、住居費、交通費、食料、衣料、家庭用品、娯楽費用などを含む200品目以上の価格を調査し、それぞれを比較。

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