河南省で6月に発生した大学入試の「大量替え玉受験」事件で、当局の調べでこれまでに、試験を実施する側の教育関係者にも多くの協力者がいたことが分かった。中国政府は腐敗現象の撲滅に力を入れているが、教育界からも多くの処分者が出ている。もはや「清潔な領域は存在しない」様相だ。中国新聞社が報じた。

 これまでの調べで、事件を計画・主導したのは2人と分かった。うち1人は逃走中。2人は湖北省武漢市の大学のトイレに貼り紙をして、替え玉受験生となる学生を募集した。

 「採用」した学生に対しては、しっかりと勉強しておくよう“激励”したという。替え玉受験を行ったのは河南省の複数の会場で、試験監督ら実施側にも事前工作を行って「話を通した」という。

 また、替え玉受験を希望する受験生の保護者と、本人に成りすます替え玉受験者の面接・会食も行った。中国大学入試では会場で、受験生が事前に登録していた指紋との照合がおこなわれるが、首謀者らは本来の受験生である高校生から指紋を採取し、「指紋偽造テープ」も用意して「替え玉受験生」に渡した。

 河南省全体では、今年(2014年)6月の大学入試で、不正が発覚した受験者は計165人で、うち127人が替え玉受験だったとされる。これまでのところ、「本人ではなく替え玉に受験させた」として、10人が「試験成績」を取り消された。中国大学入試は国家試験として実施されているが、10人は大学入試を含む教育関連の国家試験で、3年間の受験資格の取り消し処分となった。

 「替え玉」になったことが明らかになった大学生11人についても今後、厳重な処分を行うという。

 受験生保護者に求めた費用は志望校によっても異なり、最低でも2万元(約32万8000円)で、名門校の場合には2、3倍にはなったとされる。「替え玉」になる大学生への報酬は基本が5000元(8万2000円)で、成功報酬は別途支払われることになっていた。

 替え玉受験を依頼した保護者については、「指導的公職」にあった5人については解任処分、「一般的公職員」だった5人を降格処分とした。

 試験の実施・監督する立場にある教育関係者のうち5人は、「手引き役をした」として公職から追放し、今後の扱いを司法機関に移した。試験監督をなどを務めた教師8人については「積極的に自供し、捜査に協力した」との理由で、降格処分にとどめた。教師45人については「職責を果たさず、替え玉受験を成功させた」として、記録処分とした。

 それ以外にも、河南省各地の教育関係当局で指導的立場にあった者が、解任を含む処分の対象となった。(編集担当:如月隼人)

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◆解説◆
 同事件で大学入試の受験で「替え玉」を引き受けた大学生への報酬は「基本」が5000元とされている。同金額は、大都会にある待遇のよい外資系企業の大卒初任給よりは上だが、2カ月分の給料には達しない水準だ。また、少々高級なスマートフォンの購入代金程度でもある。

 中国ではこれまでにも大学入試の「替え玉」受験事件が発覚しており、引き受けた大学生も、発覚した場合には、「退学処分」は覚悟せねばならないと、容易に判断できるはずだ。

 スマートフォン代程度の金銭に目がくらんで、道徳面はもとより「人生の前途を狂わせかねない」選択をしてしまう大学生が相次ぐことに、今の中国社会の「異常さ」があらわれていると言える。(編集担当:如月隼人)