2013年Jリーグは、昨季の「王者」サンフレッチェ広島が劇的な逆転優勝を飾ったのぉ。

 最近は、リーグ戦と平行してAFCチャンピオンズリーグを戦うチームは、そのハードスケジュールに苦しめられて、リーグ戦で結果を残すことがなかなかできなかった。まして、サンフレッチェの場合は、主力の森脇良太が浦和レッズに移籍して、昨季よりも戦力的には落ちていたからな。そうした状況にあって、見事に連覇を果たしたというのは、本当に大したもんだよ。十分に評価されるべきだと思うな。

 その要因は、やっぱりチームとしてやるべきことが決まっていて、誰もが自分の役割を理解していたからだろうな。シーズン終盤になって、選手のコンディションが整ってからは、ある程度メンバーを固定して戦えたのも大きいよな。そして、何よりチームがひとつになっていた。監督、選手、スタッフが一丸となって戦っていた。その点に関しては、どのクラブよりも上回っていたんじゃないだろうか。

 一方で、優勝に最も近かった横浜F・マリノスは、土壇場で連敗を喫して涙した。

 最終節の川崎フロンターレ戦もそうだが、"ここ"という大事なところで勝てなかったことが響いた。特に痛かったのは、第33節のアルビレックス新潟戦や。勝てば優勝という状況の中、ホームの日産スタジムには6万人を超えるファンが集まった。歓喜の舞台はしっかりと整っていたわけや。でも、そこで勝てなかった。

 満員の観衆を前にして、余計にプレッシャーを感じてしまったのか、選手たちの動きは硬かったな。自分たちのサッカーを実践できず、逆にアルビレックスに隙を与えてしまった。

 結局、F・マリノスは「持ってない」チームだったんだろうな。「持っている」チームであれば、大事なところで点を取れるし、結果も出せるはず。シーズン34試合のうち、たった1試合の話だけど、すごく重要な一戦だった。それも、あれだけ最高の舞台が整っていたのに......。そこで結果を出せないんだから、やっぱり「持ってなかった」んだと思うな。

 まあでも、シーズンを通して振り返ってみれば、よくがんばったと思う。スタメンの平均年齢は30歳を越えていて、11人のうち、35歳以上の選手が4人もいた。夏場を迎える前には、「スタミナが心配」「いつか落ちるだろう」と言われながらも、その厳しい夏を乗り越えて、最後まで優勝争いを演じた。ベテランの奮闘ぶりには、頭が下がる思いだったよ。

 なかでも、際立っていたのは、中村俊輔だ。コンディションが良かったのもあるけど、彼が自身のプレイで高い意識を示して、チームを引っ張っていたよな。攻撃では、まさに俊輔が中心だった。組み立ての際は、ボールがほとんど俊輔を経由して、決定機のほとんどが俊輔のパスから生まれていた。

 もちろん、周囲のサポートも大きかった。とりわけ、ボランチの中町公祐と富澤清太郎がいい働きを見せていたな。彼らが最終ラインと前線とのつなぎ役を果たすことで、俊輔が下がってボールを受けることが減った。その分、体力的な消耗も少なく、俊輔はフィニッシュでも力を発揮できるようになった。だから、得点数も増えたんだと思う。

 さらに、前線の齋藤学、マルキーニョスの存在も大きかった。あそこでボールが収まるから、俊輔が前を向いてプレイすることができた。おかげで、簡単にボールをはたくところはたいて、仕掛けるところは仕掛けていく、といったメリハリのある攻撃が実践できていたよな。

 また、俊輔の活躍で忘れてはならないのが、守備。彼がスライディングして、体を投げ出して守備をするシーンを何度見たことか。ときには、自陣ゴール前まで帰ってきて、ディフェンスすることもあった。そんな俊輔の奮闘ぶりを見たら、他の選手もやらないわけにはいかんやろ。

 そういう意味では、俊輔のそうした姿を見て、刺激を受ける若手選手がなぜ出てこなかったのか。本来、レギュラーを脅かすような、活きのいい選手がもっと出てきてもよかった。ひとりでも、ふたりでも、そういう選手が出てきていれば、違った結果になっていたかもしれない。

 ともあれ、今季の俊輔は本当に素晴らしかった。間違いなくMVPだと思うよ。俊輔自身、F・マリノスで初めての優勝をしたかったと思う。その気持ちは相当強かったはず。それだけに、勝たせてあげたかったな。最終戦のあと、ピッチに倒れ込むほどにがんばってきたんだからな。35歳やで。ほんと、優勝させてあげたかった。

text by Sportiva