“大人になる”ってどういうこと? 大人のリアルな心情を描くコミックエッセイ

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 就職して社会に出たての頃は、職場の先輩たちは皆、迷いなく己の人生を突き進んでいるような大人に見えるかもしれない。
 しかし、実際はどうだろうか。時が経ち、自分が20代後半、30代となったとき、「思い描いていたよりも大人になれていない」と、思う人は多いはず。新社会人として入社した時、見た先輩たちも実は、いろいろなことに悩んだり迷ったりしているのだ。それでも30代になって、いろいろな責任を伴い、迷いながら、前に進まなければならない。

 大人になってからの人生、結構イベントが多い。『人生って、大人になってからがやたら長い』(きたみりゅうじ/著、幻冬舎/刊)は、長いように思える「大人になってからの人生」の苦労と喜びを、時にユーモラスに、時にセンチメンタルに描いたコミックエッセイである。

 本業として毎日務めていたプログラマの仕事のかたわら、副業として細々とうけていたイラストレーターの仕事をしているきたみ氏。プログラマの仕事は嫌いじゃない。けれど、サラリーマン生活は好きじゃない。イラストの仕事は好き。けれど、それで食べていける確証はない。どの道に進むか迷う既婚のきたみ氏29歳。
 30歳を迎える時には、せめて「この仕事!」と、全力投球する道を決めておきたい。そう思って29歳の年、サラリーマン生活を捨てた。フリーになった歳の夏には娘が生まれ、それを機に生命保険の見直しをかける。きたみ氏が33歳になった年、娘は幼稚園に通うようになり、下の子が生まれる。そして、家を買うことになる。さらに、義父の死や、家の地続きになっている裏の分譲住宅に義母が移り住んでくることになる。
 30歳を過ぎても、いろいろなことが起こるし、やるべきことはたくさんある。そんな経験を経ていく中、40歳を前にしたきたみ氏は、「自分自身を肯定してあげることが増えてきた気がする。少しは大人になれたのかな」と思うのであった。

 子どもの頃は30歳といったら「立派な大人」と考えていたはず。しかし、実際はどうだろう。精神的に未熟な部分もあるし、間違うこともあるし、迷うこともあるのではないだろうか。
 本書は大人のリアルな心情を描いた1冊だ。本書をきっかけに、人生について一人で考えてみたり、誰かと語り合うのもいいかもしれない。
(新刊JP編集部)