人気ドラマで注目されているのが、脇を固める演技が光った俳優陣。中でもお笑いの世界から俳優へと仕事の幅を広げる人々が活躍している。そこで、聞いてみました「僕が役者をやってる理由」。

「ドラマや映画は好きで見ていましたけど、自分が役者をやる気持ちは一切なかったです」

 こう語るのは、ドランクドラゴンの塚地武雅(41)。’07年、放浪の画家・山下清をモデルにした、故・芦屋雁之助さんの代表作ともいえるドラマ『裸の大将』(フジテレビ系)で、主人公の清役に大抜擢された。最初に聴いたとき、ドッキリだ、と思ったという。

「ものすごい名作だし、僕が主演なんてありえないと!坊主頭にして、裸になって、山下清さんの言葉遣いまで練習して……と、ここまでドッキリのシナリオがあるのかと、真剣に思ってたんです。そしたら『え?ほんまやったんや〜』って。驚きました」

 いまや俳優としても「実力派」と見なされるようになった塚地だが「僕はたまたま時間があるから、ドラマに呼んでもらってるだけですって。それに、ちょうど僕みたいな見た目のポジションが空いてたんですよ。役者の人がブサイクを演じたら、ちょっと痛いけど、お笑い芸人やったら笑えるでしょう?呼んでいただけるなら、なんだってやりますよ!」と言う。

『半沢直樹』で、東京中央銀行大阪西支店時代の半沢の部下・角田役を演じたモロ師岡(54)。ライブなどでは、一人コントを中心に活動している。俳優としても’96年、北野武監督の映画『キッズ・リターン』に中年ボクサー役で出演。翌年の「東京スポーツ映画大賞」助演男優賞を受賞している。

「撮影現場に行くと、『今日の分です』と助監督から手描きのメモを渡されるんですが、そこにセリフがびっしり書いてあって。だから、その前後の物語がどうなっているのか、僕にはまったくわからなくて(笑)」

 彼にとって、お笑いと芝居にはどんな違いがあるのか、聞いてみると……。

「コントは、自分を素のままでさらけ出す作業。役者は、何か積み重ねていくもの。両極端な気がします。1シーンしか出ていなくても、『この人が出ていると、作品に深みが出るね』と言われるように、いつまでも光っていたいですね」

 ’80年代、お笑いトリオ「B21スペシャル」のメンバーとして、一世を風靡したデビット伊東(47)。その後、ラーメン店での修業を経て、芸能界から完全引退、自分の店をオープンした。現在は8店舗を経営しながら、芸能界に復帰、俳優としても活躍している。

 じつは、引退していた彼を俳優の道に誘った“お笑い俳優”の大先輩がいたという。

「渋谷の店で働いていたら、あのいかりや長介さんがふらっとやってきたんです。店に入ると『元気でやってるか?』『もう、やめちゃったのか』『やんないのか?』『やろうよ』と、一言ずつ、静かに僕に語りかけてきたんです。そして『お前みたいな“やんちゃ”なやつは、(芸能界に)いなくちゃいけない』と」

 それがきっかけで、俳優の道へも踏みだしたという。

「礼儀、作る、見せる、そして味が大切。ラーメンも、芝居もお笑いも同じことです。二足のわらじといわれますが、僕にとっては一つのわらじのサイズが大きくなった感じです。すべてにおいて、まわりの人をいかに喜ばせるか。“親父(いかりやさん)”がそうでしたからね」

 名優から引き継いだ道を、確実に歩んでいる。