力投する東海大四・西嶋亮太投手

9回4点差、ゲームは最後までわからない!

7対3。4点をリードして迎えた9回表、東海大四はここまで投げ続けてきたエース・西嶋亮太(2年)をセンターへ下げ、背番号12の山口聖人(2年)をマウンドに送った。「チャンスがあれば山口を出したいと思っていた」と継投の考えを話した大脇英徳監督。8回まで7安打4失点、128球を投じていた西嶋は、守備につく直前に交代を知ったという。「完投すると思っていました」と少し驚いた心境を話したが、山口へマウンドを譲って、センターへと向かった。

点差、投球数、控え投手の経験などの要素を考えての継投。しかしこの後、思いもよらぬ展開になる。

山口が対した函館大有斗の先頭打者は9番の岸田海輝(1年)。勝負はフルカウントまでいくが、結局四球を与えてしまった。「絶対に出してはいけない所での先頭への四球」と指揮官は渋い表情。続く1番清水聖也(2年)に2球目を投げる前、一塁へ投じた牽制球が悪送球になってしまった。走者の岸田は三塁へ達する。

ここで大脇監督は早くも山口に代えて、サイドスローの下重匡史(2年)を三番手として起用した。だが、下重はフルカウントから清水に左中間を破る長打を浴びる。三塁走者は生還し、打った清水は二塁を蹴った。ところが送球が逸れる間に誘い出され、結局三本間で挟まれてタッチアウト。バタバタした形で、9回は一死となった。

最後はマウンドに戻った西嶋が何とか凌いで勝利

 この時点で差は3点。だが、悪い流れを感じた大脇監督は、センターの西嶋をマウンドへ戻す決断を下した。「(もし)負けるならば西嶋でと思いました。最後はエース番号をつけているピッチャーで戦いたい」と心境を話した指揮官。その西嶋は、「もう一度投げるかもしれないという気持ちの準備はしていた」と再びのマウンドに上がった。

代わりっぱなをショートゴロに打ち取り二死となるが、流れをつかみかけた函館大有斗はあきらめていなかった。3番平野智幹(2年)がレフトへ弾き返すと、4番畑中駿佑(2年)は左中間へ二塁打。そして5番橋本大成(1年)がライトへ2点タイムリーを放ち、ついに1点差になった。

続く6番入江健介(1年)もライトへヒットを放ち、二死一、二塁。「一つずつアウトを取る」と落ちついていたことを話した西嶋もさすがに顔色が変わった。

打席は途中出場の7番小田大稀(2年)。1ボール2ストライクからの5球目、勝負の球は小田のバットに当たらず、空を切った。

 1点差でゲームは終了。「ヨッシャー!」と大きな声を出した西嶋に、ナインはホッとした表情でエースの頭を撫でた。まさに薄水の勝利だった東海大四。『逆転負け』も覚悟した指揮官の何とも言えない表情が印象的だった。

それにしても継投は難しい。9回4点差をどう捉えるかがこのゲームのポイントだ。流れを一つのカギがスコアブックから読み取れる。それが8回裏に函館大有斗のエース・工藤理希(2年)が奪った三者三振。6回、7回と失点し5点差となった後、8回の攻撃で1点を返してもらった工藤。その裏のマウンドには渾身の力がこもっていた。直後の9回にピッチャー交代。東海大四サイドに思惑があるように、函館大有斗サイドにも別の感情が生まれたのではないだろうか。もう一度先発のピッチャーが戻る時、別のピッチャーを見た分、それまで見てきた印象と違うことがある。

1点差で東海大四が逃げ切りはしたが、勝負はどちらに左右するか最後までわからなかった。9回4点差。数字だけではなく、経過や流れがセーフティリードか否かを分ける。この試合で言えば、8回三者三振と9回の継投がゲームを最後にわからなくした。

(文=編集部)