西条vs八幡浜
島田 真希(西条)
まずは本題へ入る前に、前日の西条戦2回途中で右ひじのしびれを訴え降板した済美・安樂 智大投手(2年)のその後からお伝えしたい。 23日午後、病院で診断を受けた結果、「右腕尺骨神経麻痺(まひ)で全治1ヶ月」との診断を受けた。上甲正典監督は「骨には異常なしとの診断結果でホッとした。夏からの疲れが蓄積して生じたものだろう」とコメントしている。
さて、その済美を破った西条は勝利の余韻に浸る暇もないまま、24時間後に八幡浜との準々決勝へ。 スポーツ問わず人生どんな状況もそうだが、いいことの後には落とし穴があるもの。 菅哲也監督も試合前「疲労感はあったが、勢いを持っていきたい」願いを込めて右サイド・島田 真希(2年)を再び先発マウンドに送り込む一方、「済美戦はあくまで通過点。今日が大事」という意識を選手たちに強く植え付けた。試合前半の西条はその意識がやや過剰に働いた感が否めない。
初回・先頭打者の矢野義記二塁手(2年・右投左打・171センチ64キロ)が初球を左前に運ぶも、後続がバント失敗・併殺打で無得点。3回裏一死二塁から矢野が二塁横を破る適時打を放ち先制点こそ奪ったものの、その後は八幡浜先発・岡本 雄大(2年・左投左打・174センチ65キロ)の要所を抑えたピッチングに苦しむことに。
加えて5回裏に強烈なライナーを横っ飛びでつかんだ9番・渡邊 将斗遊撃手(2年・右投右打・162センチ54キロ)、6回裏に一死三塁から一直線のバックホームで追加点を阻止した7番・泉 圭紀左翼手(2年・右投右打・176センチ65キロ)に代表される八幡浜バックの好守もあり、6回までは1対0が続く。
終盤まで好投した岡本 雄大(八幡浜)
それでも、彼らは守りから攻撃につなげるベースだけは失わなかった。たとえば4回表は先頭打者の右中間を破ろうかという打球に対し、市原 佑晟(1年・右投右打・163センチ63キロ)が「勘がいい。(捕球点まで)一直線に走ってくれた」と指揮官も認める反応で好捕。次に島田の頭を越える緩いゴロも高橋 竜・三塁手(2年・右投左打・174センチ68キロ)が素晴らしいダッシュとワンハンド送球によりアウトに。内野守備を束ねる二塁手・矢野いわく「普段の練習から一歩目の反応をやってきている」堅守は、緊迫の展開でも揺るぐことはなかったのである。
「前半、いいプレーもあったしもうちょっとだった」。八幡浜・中岡隆児監督の言はその通りだが、我慢比べに負けたのもまた、八幡浜であった。7回裏は「一歩目」の判断ミスから生まれた2安打を含む7安打で5失点。8回裏は失策の走者を矢野の4安打目で返されコールドゲーム。西条が得たのは結果的に「快勝」の二文字だった。
そして秋季四国大会出場をかけて闘う28日・準決勝の相手は夏に敗れた東温となった。前夜はずっと八幡浜のビデオ研究に勤しみ、TVドラマ「半沢直樹」を見る時間がなかった西条・菅監督は「倍返し」の代わりにいつもの言葉を口にする。
「まず守って、攻撃につなげたいです」――。
(文=寺下 友徳)