浦和実vs大宮光陵 勝負の秋に臨んだ浦和実が苦しい初戦を突破！
楽しみな1年生・南雲郁哉（浦和実）
勝負の秋に臨んだ浦和実が苦しい初戦を突破！
南部地区では実力ある選手がそろったチームとして注目されている浦和実。夏のベンチ入りが8人おり、秋の戦績が期待される好チームだ。
先発は背番号1のエース・横溝 克典（2年）ではなく、背番号20の南雲 郁弥（1年）だ。178センチ60キロと体の線は実に細いが、才能は光るものがあった。可動域の広さ、腕の振りの鋭さ、軸が安定し、完成度の高いフォーム。技術的なモノに加え、鍛えれば球速も大きく伸ばしていきそうな素材の良さがあるのだ。直球は130キロ前後は出ていそうで、スライダー、カーブのコントロールも良く、リリースも安定している。あとは体力面だけというぐらい育てがいのありそうな投手であった。その南雲は3回無失点で切り抜ける。
4回からエース左腕の横溝 が登板。横溝はややトルネード気味のフォームから繰り出す直球は120キロ後半は出ていそうで、スライダー、カーブのキレもまずまず。外角中心に集めて、大宮光陵打線を無安打に抑えていた。
打線は大宮光陵の先発・三室 皓太（2年）を前に抑え込まれていた。三室は足をノーラン・ライアンのような足の上げ方から体を沈みこませて腕を振り抜いていく。非常にタイミングが取りづらい。浦和実の辻川正彦監督は「うちはこういうタイプはあまりやったことがないので、きつかったですね」と語る。独特の投法をする三室を前に打ちあぐんでいた。秋の初戦。自分通りの力を発揮するのは難しいものがあった。
0対0の好ゲーム。均衡が破れたのは6回裏。浦和実は一死二塁のチャンスを作り、6番眞崎の左中間を破る二塁打で1点を先制し、試合の均衡を破る。
4番・高橋拓巳（浦和実）
だが7回表、大宮光陵は1番作山は右前安打、2番三室が犠打で送り、3番田中の二ゴロを二塁手が失策。1対0の僅差から生じやすいミス。一死一、三塁として4番島田のスクイズで1対1の同点に追いつかれる。
浦和実ナインに硬さが見られたイニング。初戦というのはこういうミスが生じやすい。硬さを取りのぞくにはやはり勝つしかない。7回裏、浦和実ナインが本領発揮。
まず9番横溝が内野安打で出塁すると、1番皆川 浩太（2年）は犠打できっちりと送り、一死二塁として、2番石井 航騎（2年）が高めに入った直球を捉えて右中間を破る二塁打で勝ち越しに成功。この長打で、浦和実ナインは元気を盛り戻したのか。それまでに見られなかった思い切りの良いスイングを見せていく。
3番小暮 翔馬（2年）が倒れ、二死となったが、4番高橋 拓巳（2年）の適時打で3対1。さらに5番五十嵐 皓洋（2年）がライトの頭を超える二塁打で、高橋が生還し、4対1。6番眞崎の右前適時打で、5対1。そして7番嶋田が左中間を破る長打を放つ。まず眞崎が生還し、そして嶋田も本塁を狙い、セーフ。記録はランニングホームランになるかは分からないが、スコア7対1と反撃する気迫が削がれるような大きな追加点を入れたのは間違いなかった。
9回表、3番手に金井 修司（1年）が登板。三者凡退で退け、浦和実が苦しい初戦を突破した。
3番手・金井修司（浦和実）
勝利した浦和実。6回まで苦しんでいたが、7回以降の攻撃はそれまでの重圧を取り払うのような攻撃であった。
今回は浦和実の投手陣の層の厚さに驚いた。南雲、横溝を取り上げたが、3番手の金井も良い投手であった。左スリークォーターから投げ込む直球は常時125キロ前後。速い時は130キロに迫りそうな直球を投げていて、ボールの勢いは横溝と変わりない。
南雲、金井と素質ある1年生投手二人に対し、辻川監督は「南雲は宝物といっていいぐらい優れた素材ですが、まだ体の線が細いですし、金井は入学直後は全く体ができておらず、実戦で投げられる段階ではなかった。二人とも練習を重ねながら、試合でも強豪校との練習試合で登板し、修羅場を積んできました。強豪校には勝てませんでしたが、彼らの力になっていると思います。でも彼らは高校生のスタートラインをようやく切ったばかり。これからです」
期待しながらも、奢ることなく、これからも努力を続けてほしいという思いが込められていた。2人とも良い素質はある。ただここから強豪校に勝てる投手になるには相当な努力が必要である。これは本人が自覚して取り組まなければならない。高いレベルを経験する中で、実力を高めていければいいだろう。
また浦和実は夏にベンチ入りしていた選手が8人いる。堅実な一塁守備に、一本足のタイミングで豪快に振りぬく打撃を得意とする4番高橋、右、左にシュアな打撃を見せる小暮、2.00秒台のスローイングに、パンチ力ある打撃を売りにする捕手の嶋田と2年生にも楽しみな選手が多い。
この秋の浦和実は南部地区では浦和学院とともに、見逃せないチームに入りそうだ。
(文＝河嶋 宗一）
