延岡学園vs富山第一 延岡学園がアウト取消しも動揺せず。延長11回サヨナラ勝ち!
宮崎県勢として48年ぶりの準決勝進出を狙う延岡学園(宮崎)と史上初の準決勝進出を狙う富山第一(富山)との対戦である。この試合は両チームともエースの登板ではなかった。延岡学園の先発は井出 一郎(2年)。富山第一は石川 達弥(2年)。井出は130キロ前後の速球、スライダーを投げ分ける投手。石川は120キロ台の直球、100キロ台のカーブを投げ分ける左腕で淡々と打たせて取ることができていた。
先制したのは富山第一で2回表に4番幸山 一大(2年)が左中間を破る二塁打を放ち、中村 順風 (3年)の二ゴロを放ち、一死三塁となって藤井 信太郎 (3年)の犠飛を放ち、先制。石川は4回無失点でマウンドを降りて、5回裏からエースの宮本 幸治(3年)が登板する。宮本はいきなり二者連続三振を奪い、三者凡退に打ち取る上々の投球であった。
延岡学園は6回表途中から横瀬 貴広(3年)が登板。横瀬が登板し、無失点で切り抜け、6回裏から反撃。松元 聖也(3年)のセーフティ内野安打。坂元 亮伍 (3年)の三ゴロを三塁手が二塁へ送球したが、野選となり、無死一、二塁となる。ここで4番岩重 章仁(3年)。長打が期待される場面だが、延岡学園ベンチは犠打を選択し、一死二、三塁。ここで5番浜田 晋太朗(3年)。宮本はこの場面で全力投球。145キロのストレートで押してくが、高めに浮いたスライダーを浜田は逃さなかった。捉えた打球は右中間を破り三塁打となり、逆転。さらに続く6番田中 祐樹(3年)のスクイズ犠打で1点を追加し、3対1とする。だが富山第一も黙っていなかった。無死一、二塁から寺崎 光(2年)が左前安打を放ち、1点を返し、9番宮本が大きい中飛で二塁走者が走り、一死一、三塁とすると、2番西田 悠貴(3年)の左前適時打で1点を返し、同点。そして3番黒田 奨貴(3年)の右前安打で逆転に成功し、4対3とする。
このまま宮本で逃げ切りたいところだが、8回裏、一死二塁で延岡学園で4番岩重に対し、140キロ台の速球、キレのあるスライダーを徹底的に厳しくつくが、岩重はファールで粘り続け、9球目。甘く入ったスライダーを逃さず、レフトへ二塁打。まさに火を噴くような当たりであった。同点に追いつき、4対4のまま9回へ。9回に球史に残るプレーが起こった。富山第一は一死一、三塁のチャンスを作った。打者は7回に適時打を打っている2番西田。チャンスは十分にありと思った。延岡学園は弘前学院聖愛戦で完投勝利した奈須 怜斗(3年)に代える。
奈須は西田を二ゴロに打ち取り、併殺。これでピンチを切り抜けたと思ったが、レフト線審がタイムを宣告していた。この場面、延岡学園ベンチで投球練習していたボールがフェアゾーンに入ってしまったからだ。プレーの妨げになるボールが入ったのだから、タイムをかけるのは無論問題なく。この場合は線審にも球審同様の権限がある。審判の立場として当然な判断だが、だが4対4の同点で、9回表という緊迫した場面で、守っている内野手、主審、打者、ベンチはレフトの線審の動きに気付かなかったのは無理もないだろう。ただこれで打たれてしまっては心情的に悔しさが残るだけだろう。奈須は全力で腕を振り、2番西田をスライダーで空振り三振。3番黒田も空振り三振に打ち取り、見事ピンチを切り抜ける。一度取消しなったゲッツーを奈須が二者連続三振という最高の形で無失点で切り抜けただけに延岡学園サイドはほっとしたことだろう。
試合は延長戦を迎える。11回裏、一死から5番濱田が右前安打、6番田中も右前安打で続き、一死一、二塁のチャンス。7番の代打・薄田 凌(2年)は二ゴロ。痛恨の併殺かと思われたが、ショートが悪送球で一塁ファールゾーンへ転々と転がり、サヨナラ。延岡学園が宮崎県勢としては48年ぶりの準決勝進出を決めた。
この試合で驚かれたのは富山第一の宮本から5点を奪った延岡学園の打力。4番岩重を筆頭に振れる打者が揃っているのが強み。投手陣も3人をうまく使い分けており、エース横瀬に頼らず、上手く継投で勝ち上がってきている。継投で全国4強で勝ち上がるチームも珍しい。決して延岡学園の投手陣の能力自体は飛び抜けたものはないのだが、どの投手も試合を作れる能力があり、どの場面にも使えるのが強み。あとは打者の的を絞らない投球術をしっかりと確立し、打線が伴えば、全国でも戦えることを証明した。
富山第一は今大会でもトップクラスの実力を持ったエース宮本を軸とした強力なチームであった。あと一歩で準決勝進出を逃した悔しさが今後の富山第一ナインの力となってくれることを祈る。この年から富山の高校野球が盛んになり、さらに活気ある県へ成長することを期待したい。
(文=河嶋 宗一)