かっこいい、きもちわるい、大好き。そう、きもちわるいものって好きなんだよ、心地いいんだよ。秋田書店のWEBコミック「チャンピオンタップ!」が、初回から攻めてます。全く守りに入っていません。気持ち悪くて、落ち着かないものほど心がほっとするのをわかって作っている、とんでもないWEBマンガサイトになりそう。要チェック!

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秋田書店のWEBコミックサイトができたんですが、とにかく開いてくれ。
Champion タップ!
キャッチコピーがすごいんだ。

「かっこいい、きもちわるい、大好き。まんがは全部知ってる。」
待て。
「きもちわるい」なの!? そこで!?

秋田書店といえば、チャンピオンやプリンセスという安定した雑誌を出版しながら、最近では『もっと!』のように、ある意味斬新、ある意味90年代的「『雑』誌」感あふれる本を出版しています。
ついに、秋田書店動き出したか!とワクワクしていたところで、立ち上がった。WEBコミックスサイトがこれですよ。
「かっこいい」は分かる。「大好き」もわかる。

「きもちわるい」

ああーーー。そうなんだよ!
「きもちわるい」ことって、「大好き」で、なんだかほっと出来るんだよ。
きもちわるいから、救われる感覚って、あるんだよ。

既にかなりの連載が始まっていますが、最も目を惹くのは『空が灰色だから』の阿部共実の新作でしょう。
タイトル書きますよ。
『死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々』
……覚えられない……。スリランカの首都より難しい。

阿部共実という作者は、人間の心の隅っこにあるジクジクしたものを描き出す作家です。
それは悲しかったり寂しかったり痛かったりもするんですが、同時に「愛しい」。
見るのが確かに怖いくらい、心の裏側をえぐるんです。
でも見ていて、自分の一部だから、目が離せなくなるんです。
今回も、第一話からいきなり、弟の自殺の話から始まります。
阿部共実の作品は、最後の一コマになるまで、ハッピーエンドかバッドエンドかわからない不安定さもあります。
あんまりそこにボーダーが存在しないんです。
「死にたい」って言葉はいい言葉ではないですが、「死にたい」って言うことは「本当はちゃんと生きてたい」という気持ちの裏返しであることを、作者は知って使っているかのよう。
まさに「きもちわるい」が「大好き」な作品です。

『ぼくらのへんたい』などを連載しているふみふみこの『さくらの園』がまたすごい。
カットを見ると、女の子だらけのほわほわ萌えマンガっぽい。
でも2P目で「ちんこって知ってる?」という会話がスタート。なにごとだ。
実はこの世界、女子中学生と異形のものしかいない、歪んだ世界。
なので生殖活動そのものが存在しません。
むしろ、「女子中学生という異形」を描いているような錯覚に、たった一話でさせられてしまう。
「かわいい」という名の「きもちわるい」がここにあります。

ぼくのオススメは、たばようの『宇宙怪人みずきちゃん』。
この作家、チャンピオン本誌で数回集中連載された『くろすぶりーど』がネットで絶賛されました。そして、WEBでの連載が開始。
『くろすぶりーど』がまたすごい作品だったんですよ。違法遺伝子操作によって、人間と動物の境界線がなくなっちゃうマンガで、獣人ならともかくアリ人間(人間アリ?)とかトラウマ級でした。
『みずきちゃん』は、少年が「この異常に整頓された町をどうやってこわしたら楽しいかなって」という不思議な女学生みずきちゃんと出会う話。宇宙人です。
まだ何も破壊していませんが、いちいち表現が不気味。少年のことは「いつでもアリを見るような目つき」で見ていますし、頭からセミをシャクシャク食べます。
トーンを一切使わない、ごりごり描かれる、ちょっと臭いそうなくらい木と土臭い世界は、かわいいけど「きもちわるい」。

その他の作品もかなりクセがあります。
クセ?いや個性?違うな。作家性、でしょうか。
『もっと!』もそうなんですが、作家さんたちが自分の武器を理解した上で、何かに挑戦して描いているんです。
実質公開されているのはまだ半分くらいなんですが、現時点ですでに相当に濃いです。
施川ユウキの『サナギさん』と水沢悦子の『おしえて。ポコ先生』は今までのキャラ同様とはいえ、改めて見ると相当に個性強いです。

ナタリーで公開されている阿部共実と施川ユウキの対談では、阿部共実がこう語っています。
「たぶん、普通の話を描く人はひとりもいないんじゃないですか。全員、作品の中にどこか普通じゃないものを絶対入れてくるんじゃないかと(笑)。そこはすごく楽しみです」
今後、『メンヘラちゃん』の琴葉とこの新作や、『もっと!』から移動のさとの時間停止思春期コメディ『フラグタイム』なども開始します。
かっこいいのも今後増えるでしょうが、「かわいい」がなく「きもちわるい」なのは注目したいところ。
「きもちわるい」ことの、心地よさあふれるWEBマンガサイトになることを、心から期待しています。

にしても、「Champion タップ!」と「もっと!」を同時に見ると、「気持ち悪い」が好きすぎて、胃もたれがすごいです。
どちらも、何回かに分けて読みましょう。


(たまごまご)