/ゆでカエルやドジョウ鍋のように、日々徐々に悪化していくことに人間は感覚が麻痺してしまう。だが、いまの関東は、あまりにも災害に脆弱だ。進学や就職で東京に新たに行くのだけは止めておけ。/

 ゆでカエル、なんていう話がある。熱湯に入れようとすれば、どのカエルも必死で飛び出す。だが、水から徐々に湧かしていくと、ごきげんに泳ぎ回る。そのうちのぼせてくるが、ちょっと熱いかな、と思っても、騒いではみっともない、と我慢してしまう。そして、しずかにみごとにみんな煮える。ドジョウ鍋なんていうのもある。生きたドジョウを豆腐といっしょに鍋に入れ、火にかける。すると、ドジョウは鍋から逃げ出そうともせず、むしろとりあえず豆腐の中へと逃げ込むが、結局、最期は煮える。

 311から一年半、昨今、関東では地震など当たり前。みんな慣れっこで平気。多少、恐いと思っていても、この不景気には、とりあえずは明日の仕事、と、粛々、毎日を送る。が、仕事を守って、命を失っては、身もフタもあるまい。

 ユダヤ人差別はヨーロッパでは中世からあった。第一次大戦後の不景気で、ユダヤ人への悪口や皮肉が広まったが、それは陰でこそこそ。まれにユダヤ人の店にペンキでイタズラ書きをするやつがいても、警察が取り締まった。ヒットラーのような狂信的差別主義者が出てきても、大半の人が、あれはまれに見るバカだ、と思っていた。しかし、そのバカが群れをなして跋扈するようになると、イタズラ書きの抗議にも、警察は苦笑いでごまかすようになる。そして、世界恐慌とともにバカが増え続け、33年には、ヒットラーが本当に政権を取ってしまった。公務員などからユダヤ人が排除されたが、それでもまだ、あいつも一国の首相になった以上、相応の良識くらいはあるだろう、などと、多くのユダヤ人たちは楽観していた。

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