人が痛がったり悲しんでいる様子を見ると、私たちの頭の中にある「同情ニューロン」と呼ばれる神経回路が反応して、その人と同じような気持ちになります。

実は、「モノ」が壊されたりするのを見ても、やはり「同情回路」が活性化するようです。


コマーシャルで、タレントがビールジョッキを傾けてごくごくと飲み、

「プファー・・・うまい!」

とおいしそうに味わっているのを見ると、自分もビールが飲みたくなるもの。

このとき、飲んでいる本人の脳と、それを見ている私たちの脳は同じ部位が興奮しているのだそうです。つまり、他人の行動や感情の動きを見ると、あたかも自分が同じことをしているかのように脳は感じているわけです。

こうした働きをする神経細胞のことは

「ミラーニューロン」

と呼ばれています。

まるで

「鏡」

のように相手と同じ部位が反応することからこのような名称が与えられています。ミラーニューロンのおかげで、人は相手の気持ちに「共感」することができ、また、「模倣」を通じた学習が可能になっていると言われています。


さて、ミラーニューロンと同じような働きをする

「同情ニューロン」

の存在も近年確認されています。

ロンドン大学のシンガー博士らの研究によると、罪のない人が「冤罪」で罰せられているのを見ると、「島皮質(とうひしつ)」や「帯状皮質」などの、「不安」や「痛み」に関係する大脳皮質が強く反応することがわかったのです。

ここが、

「同情ニューロン」

と呼ばれる神経細胞があると考えられている部位です。

ただし、どんな状況でも、相手に同情するわけではありません。

実際に悪いことをした人が、相応の罰を受けているのを見た場合には、私たちはおそらく、

「自業自得だね」

と考えるからでしょうか、同情ニューロンの反応は弱くなります。

興味深いのは、上記の場合に、女性では同情反応が40%ほど減るだけなのに対し、男性の場合ほとんど完全に消失することです。

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