自民、公明両党は28日、野田佳彦首相の問責決議案を参院に提出し「ただちに解散・総選挙を行い、国民の信を問う」よう求めた。決議案は29日の参院本会議で可決される見通しで、国会が30日以降、会期末の9月8日までほぼ空転することは確定的だ。

決議案が提出された背景には、民主党が28日の衆院本会議で「衆議院選挙制度改革関連法案」と赤字国債発行に必要な「特例公債法案」を強行採決したことにある。両法案は野党が多数を占める参議院では成立のめどが立たないが、自公両党の問責決議案提出を誘うことで国会は事実上の「閉会」状態となるため、今国会中の解散を回避する狙いとみられている。

こうした与野党の動きに加え、ここ最近起こったさまざまな事件で、解散総選挙の風向きが変わってきているという見方もある。国交省官僚のD氏は、香港の活動家による尖閣上陸の一件で、野田政権が延命する可能性があると指摘する。

「野田政権にとっては幸運なことに、今回の船は出航前から尖閣に上陸すると予告があったので尖閣到達までには時間的余裕があった。よって政府は、中国外交部と互いのメンツが立つような対処をしましょうというデキレース的な打ち合わせを行なっていた可能性が高いんです」

具体的には、どのような打ち合わせが行なわれていたというのだろうか。

「日本の逮捕執行に対して中国は即時釈放を求める。それが実現されれば中国側のメンツは立つ。日本側は大袈裟に約30人もの警察官や海上保安庁と入国管理局の職員で活動家らを待ち構えて逮捕するショーを見せ、国内のナショナリズムを喚起できた。野田政権が浮揚する可能性も多少はある。日本は前回のような0対10の完敗ではなく、4対6の惜敗に持ち込めたわけですから」(D氏)

野田政権への“追い風”は、ほかにもある。

「さらに悪運が強いことに、たまたま8月10日に『改正海上保安庁法』が衆議院を通過したばかりなんですよ。現行法では、今回の事件のように陸地で警察官が待ち構えていないと逮捕できない。改正法では、海上保安庁の職員でも逮捕できるし、条件をクリアすれば海上でも逮捕できるんです。今の機運ならば改正法を参議院で通すことは容易でしょうから、速やかに成立させて、より強い姿勢をアピールすれば漁夫の利で支持率が上がって政権の延命も十分に考えられます」(D氏)

一方、民主党議員の美人秘書、B氏は『週刊ポスト』による維新政治塾の塾生名簿全員分公開スクープが、野田政権を命拾いさせると見る。

「今まで、維新の候補者は顔の見えない不気味な敵だったんです。でも今は実名がわかった。民主党もそうですが、おそらく自民党さんも名簿をもとにシラミ潰しに塾生の調査を開始したと思いますよ。実名さえわかれば、今はインターネットで過去の経歴などはわかるし、地元での評判なども党の地方組織や地元の私設秘書を使えばわかる。相手がわかれば足を引っ張ったり周囲に圧力をかけたり、いろいろできるんですよ」(B氏)

民主や自民ら既存政党としては、維新政治塾生の調査をする時間が必要だ。そのため解散をなるべく先送りにしたい人間が増え、結果的に野田政権が延命することになるというのだ。

では結局、解散総選挙はいつになるのか?

「前例的に12月はないと思いますから、年明けの通常国会冒頭に解散して、2月上旬に投開票でしょう」(自民党議員のベテラン男性公設秘書・A氏)

民主党や自民党の多数派がはじき出した解散総選挙の有力日程。だが、解散は総理大臣のみが持つ専権事項だ。はたして野田首相の考えは……!?