日本人最多の五文字を、先週末から何度となく見かけている。香川真司がリーグ戦12ゴール目をマークし、欧州主要リーグでプレーする日本人としてはシーズン最多得点を記録したからだ。

価値ある足跡なのは間違いない。ただ、得点数だけで単純に評価をするのは、個人的にいまひとつしっくりこないのである。

香川以前の最多得点者は、フランクフルトに在籍した当時の高原だった。ドイツ・ワールドカップ直後の06−07シーズンのブンデスリーガで、彼は11ゴールをマークしている。

このシーズンのフランクフルトは、ウインターブレイク明けに降格圏の17位まで順位を下げた。最終的には14位でフィニッシュするものの、降格の危機にさらされ続けた。シーズン前にはトップ10入りをターゲットとしながら、結局は１部残留が目標となった。

そうしたチームにあって、高原は11ゴールをマークしたのである。ストライカーとしては決して恵まれていない環境下での２ケタ得点に、大いなる価値があったのだ。
中田英寿にも同じことが言えるだろう。彼が10ゴールを叩き出した98−99シーズンのペルージャは、セリエＡ昇格１年目のチームだった。ＵＥＦＡカップ圏内へ浮上した時期もあったものの、最終的にはセリエＡ残留に総力を注ぐことになる。シーズン終了時の順位は、くしくも06−07シーズンのフランクフルトと同じ14位だった。

ひるがえって香川である。

彼が所属するドルトムントは、リーグ優勝を射程圏内とする強豪だ。今シーズンも首位をキープし、リーガ連覇へ突き進んでいる。チャンスの絶対数は多い。攻撃的なポジションを任されている選手が、これぐらいの得点をあげるのは当然と言ってもいいだろう。

外国人選手である以上、ゴールという結果は重要な評価基準になる。ただ、そればかりが評価されるのは、他ならぬ香川にとっても本意ではないと僕は思う。

何よりも評価されるべきは、ドルトムントで確固たる地位を築いていることにある。チャンピオンズリーグにも出場する強豪クラブで信頼を勝ち取ったからこそ、彼は得点を重ねることができているのだ。週末のリーグ戦での大きな成果の裏側には、日々のトレーニングでの地道なアピールがある。