■皆が同じようにはできない


――加藤さんのおっしゃることは間違いないと思う一方で、必ずしもそうなっていない現状があります。それぞれ忙しい中で、ゆっくりと日常に埋没していく方が大多数であると思います。

加藤 多くの人たちは「被災地のために何かしたい」と思っても何をしたらいいか、どこに行けばいいのか決められないと思います。自分も石巻・女川は地元で、被害がひどいと聞いたので行ったわけで。僕にとって縁のある場所でしたが、遠く離れている人にとってはまず地理がわからないし、状況もわからない。そこを具体的に繋ぐ人が必要だと思います。

 僕自身も、そういう思いを形にするために小笠原満男(鹿島)らに協力してもらっている「東北サッカー未来募金」を始めました。東北サッカー協会が窓口になり、被災地三県のサッカー協会を通じてローカルのサッカー協会にダイレクトに行く支援です。ただ、赤十字のような一般の方向けではありません。

 僕は自分の役割でもあると思うので、「どこそこでこういうものが必要」という情報をきちんと発信しようと思っています。例えば、どこそこではボールがあるけれどもネットが足りない、といったことを。JPFAのチャリティマッチに協力したジャスト・ギビング・ジャパンですとか、そういう具体的な取り組みに支援することを呼びかけたいと思います。

 小笠原は今年も「東北人魂」や東北サッカー未来募金をもう1年続けるようですし、僕自身も「ここでこういうことをしませんか」という呼びかけができればと思っています。今まではこれだけ広い範囲を観て、その状況を把握するだけでも相当エネルギーを要ることですから。

 ボールにしても十分にあると言いながらも、ないところってあるんですよね。地域の中でもいろんなチームがありますから、特定のチームはボールがあるけど、別のチームでは足りていないとか。そういうことも現実にあるので。

 僕は一番ひどい被害にあったところ、街が無くなったところをベースにやっているチームを主体に考えて復興支援をやろうと思っています。そこはなかなか情報が得られないし、何かのツールを使って情報発信をしていきたいですね。

 あとはそういう気持ちがある皆さんに言いたいのは、「皆が同じようにはできない」ということです。やれることをやればいいんです。スタジアムでの募金活動に協力するだけでもいいんです。離れている人が被災地に行くことは、難しいです。誰かが運転してくれないと、なかなか辿りつけないですから。

 そういう意味では、すべての皆さんに求めるのは無理だと思います。それぞれの立場でできることをやればいい。それで十分だと思います。

<了>