アジアカップ優勝、W杯3次予選突破と、2011年の日本代表はきっちり成果をあげた。本田が1試合も出場できず、長友や内田を欠くこともあった3次予選では、清武やハーフナー・マイクが新たなオプションとして台頭してきた。この1年間で、攻撃陣は選択肢が増えた印象が強い。

そうした成果と対比して語られるのが、3-4-3の成熟度である。他ならぬザックは時間をかけて浸透させていくスタンスだが、彼の代名詞として紹介するメディアはそこまでゆったりと構えていない。4-2-3-1に並び立つ完成度を求めている。

代表チームはクラブのような継続性を持てない。システムを使い分けるには、ある程度の時間が必要だ。ジーコのチームが4-4-2と3-5-2を使い分けるようになったのは、監督就任から1年以上が経過した2003年末の東アジア選手権からである。ジーコが指揮する15試合目のことだった。オプション作りへの取り組みは、ザックのほうが早い。

ジーコがブラジル伝統の4バックに対するこだわりを棚上げしたのは、「3バックに慣れている選手が多い」という理由に基づく。ザックの4-2-3-1は、ほとんどの選手にとって馴染みのあるシステムだ。遠藤や今野のように取り替えのきかない選手はいるものの、どのポジションにもひとまず複数の候補者が揃っている。システムを変えなければチーム力が低下する、といったことはない。

3-4-3を急ピッチで仕上げる必然性は、いまのところないのである。現時点で3-4-3にトライするメリットは、対戦相手との駆け引きにある。
「同じシステムばかりで戦っていると、相手も研究をしてくる」とザックは言う。日本側が相手チームをスカウティングするように、相手側も日本の戦いぶりを分析する。過去何試合までさかのぼって、ストロングとウィークの両ポイントを洗い出す。

そこで、日本が3-4-3を使っていたら。相手側の監督は、ふたつの戦い方に対する準備をしなければならない。ザックが3-4-3を採用したゲームに、何らかの共通点はあるのか。いつ、どこで、どんな展開になると、3-4-3へシフトするのか。相手側の監督は、様々なシミュレーションを迫られるだろう。

ましてやザックにとっての3バックは、黄金の武器である。相当に頭を悩ませるはずだ。日本が4-2-3-1から3-4-3へ変更することを前提として、相手側が守備を意識した選手交代をしてくるかもしれない。３−４−３をちらつかせることで、試合前も試合後も相手を惑わせることができるのだ。

もうひとつのメリットはチームの活性化だ。
「同じことばかりでは成長につながらない」ともザックは話している。結果が出ているチームにも刺激は必要だ。代表における刺激は新しい選手の招集であり、新たなオプションへのトライである。3-4-3の導入は、各選手がキャパシティを拡げるきっかけとなるだろう。

2012年も年頭から公式戦が続くが、8月のキリンチャレンジ、10月の海外遠征と、W杯最終予選と切り離して考えられるゲームがいくつかある。そうした機会に3-4-3をテストし、完成度を一歩ずつ高めていけばいい。慌てる必要はないのだ (第3回へ続く)。

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