11月15日に行なわれた北朝鮮戦で、ザッケローニ監督就任後の不敗記録が17試合で途切れた。W杯3次予選突破後のゲームであり、何人かの主力を温存しただけに、0-1の敗戦はさほど問題視されなかった印象がある。長時間の入国審査から金日成スタジアムの雰囲気など、ピッチ外の事象にかき消されてしまったようだ。

直前のタジキスタン戦との大きな違いは、遠藤保仁の不在である。彼が先発から外れたことで、日本は落ち着きを失ってしまった。
遠藤の存在感の大きさは、一カ月前のベトナム戦が示唆していた。10月7日に神戸で行なわれたこの一戦で、日本は1-0の辛勝に終わっている。ザック就任後のワーストゲームと言っていい内容だった。振り返れば1月のアジアカップでも、本田圭佑が遠藤の高い貢献度に触れていた。
誰もが痛感していることではある。ただ、順調さを印象付けてきたゲームと、遠藤がいないゲームの落差は看過できない。

同じことはセンターバックにも言える。
吉田麻也がこの一年で計算できる戦力となり、今野泰幸とのコンビが定着した。一方で、彼らに続く3番手は不確定要素が色濃い。北朝鮮戦で今野のパートナーに指名された栗原も、及第点をつけられる出来ではなかった。不敗記録のストップは、センターバックとボランチのバックアップ層が意外なほど脆弱であることを示した。

国際Aマッチ出場が100試合をこえる遠藤の代わりなど、そう簡単に見つかるはずがない。だとすれば、チーム戦術にマッチした違う個性を探していくのが打倒だ。
候補者がいないわけではない。阿部勇樹、細貝萌らはW杯3次予選で起用されており、実績を考えれば中村憲剛をボランチで使ってもいい。川崎Fでトップ下とボランチを兼務する中村憲なら、2列目のアタッカーをうまく操ることができる。本田圭、香川、岡崎らとのコンビネーションも問題はないはずだ。

センターバックはどうだろうか。
ザックの構想で最終ライン両サイドを担っている伊野波雅彦や槙野智章は、センターバックの資質も備えている。ただ、今野と伊野波では高さへの懸念が生じる。最終予選で中央アジアや西アジアの身体能力に対抗するのはもちろん、対世界を見据えたうえでも、最終ライン中央の高さは不可欠だ。
所属クラブで定位置をつかめていない槙野は、ゲーム体力への不安が付きまとう。冬の移籍マーケットで新天地を求めれば、状況は好転するかもしれないが……。

そうした状況を踏まえると、2011年は一度も招集されていない闘莉王の復帰が検討されてもいい。所属する名古屋でのパフォーマンスは、代表入りにふさわしいものだ。今野や吉田にとってもこれ以上ない刺激となるし、闘莉王から学ぶもの、得るものは間違いなくある。

経験のある闘莉王のような選手を加えることで、チームが引き締まる効果も期待できる。ザックのチームには25歳前後のポテンシャル豊かな選手が揃っているが、年齢が近い選手が多いためか、ときに緊張感に欠けるところがある。チームとしてのまとまりは感じさせるものの、南アフリカW杯時に比べると物足りなさを覚えるのである。

対戦相手のレベルが上がる最終予選では、チームの実力だけでなく一体感もひとつ上のレベルで臨みたい。良い意味で厳しさを持ち込める闘莉王は、ふたつの側面でチームの地力を高めることができると思う (第2回へ続く)。

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