7月25日、九州電力がこれまでに行なった原発関係の6件の住民説明会やシンポジウムなどで、同社社員や関連会社の社員ら数百人に参加を呼びかけていたことが分かった。九電は組織的な動員、つまり“サクラ”が常態化していたことを認め、29日に経済産業省に報告する方針だという。

 玄海原発の再稼働をめぐる「やらせメール」問題に端を発した内部調査により発覚したと九電は説明するが、九電に限らず日本の企業にはこうした「やらせ」問題が以前からゴロゴロ転がっていた。事務機器メーカーの社員がこう証言する。

「わが社の営業担当が、アマゾンで販売されている取引先の家電メーカーの新商品にいち早くレビューをつけることにしました。評価を5つ星にするのはもちろんですが、投稿するときのハンドル名を、家電メーカーの人が必ずその営業担当者だと気づく名前にしておいたのです。数日後に営業に行くと、案の定、『あれ書いてくれたの、あなただよね。ありがとう』と満足してくれた様子でした」

 やらせを糾弾されるどころか、かえって感謝されたようだ。しかし、これが関連会社ではなくユーザーにばれたら一大事だったに違いない。そんな企業の心配を背景に、次のようなサービスを行なっている企業もある。

「口コミサイトの掲示板に、企業自身が自らの商品やお店についてやらせ投稿を行なうことは多いのですが、バレると逆効果です。そこで今は、そのやらせ投稿を商売にしている専門の企業も現れています。1投稿数千円といった金額で、企業にとっていい記事を投稿したり、企業のHPに誘導する回答を行なってくれるのです。作文の手間がかかる割に安い仕事と思われるかもしれませんが、業種別にパターンを作ってあるので、作業はただのコピペです」(IT企業社員)

 ネットにおけるこうした“やらせ書き込み”は、大企業だけに留まらず、個人経営の店などでも恒常的に行なわれている。某飲食店店員がこう話す。

「うちの店長は自分の店(普通の居酒屋)のことを『食べログ』に『グルメなら一度は行きたい名店』などと書き込んでいます。バイトのコにも『店員さんがかわいい感じのいい店』とか、作文を強要。1回来たらすぐバレるのに……。最近、店長は近所にあるライバル店のアラを探して投稿することに精を出しています」

 気軽にできて、効果もあるネットの“やらせ書き込み”。ただし、バレたらただでは済まないことも忘れてはならない。

(取材/梶野佐智子)