東日本大震災の被災地3県(岩手・宮城・福島)の1年間延長を除き、地上デジタル放送への完全移行(アナログ停波)が約1カ月後に迫った。移行を進めている総務省によれば、昨年12月現在の地デジ普及率は95%だという。山間部など視聴できない世帯については、BS(放送衛星)放送経由で視聴できるようにする緊急対策が行われる。「移行に死角なし」と言いたいところだが、この数字は実に信用ならない。


■高齢者を除いた怪しい調査
総務省の調査については、ニュースサイトの一部でも問題になっている通り、重大な問題がある。「95%」の根拠となっているアンケート調査には、80歳以上の人が含まれていないのだ。この年齢層の世帯は、全国で約260万もいる。

テレビへの依存度が高いのに、地デジ移行の周知が遅れているのが高齢者層だ。総務省は、世帯は別でも若い人と同居している高齢者もいると言うが、260万の大部分をカバーすることはない。80歳以上の人を除いた調査は、それだけでも「片肺」なのである。

■荒川区で見ると…深刻!
私が住んでいるのは東京都荒川区である。日頃住んでいる感覚から、「地デジ普及と認知度は低いだろう」と感じ、区役所のWebサイトを探したら、一昨年9〜10月に行われた区民へのアンケート調査「第34回荒川区政世論調査結果」が見つかった。

それによれば、区内の地デジ放送利用率は46.4%で、アナログを利用している割合(48.4%)よりも低い。「わからない」「無回答」を、仮に「アナログ視聴者」に加えれば、その割合は5割を超える。町内によっては、この数値が6割以上のところさえある。この時期、総務省の調査では「地デジ普及率」は69.5%となっていた。何と、「46.4%」という区内調査とは20ポイント以上の開きがあるではないか!

本調査は2年近く前のものである。総務省の調査結果が「69.5%→95%」となったように、荒川区内の普及率も伸びてはいるだろう。だが、20ポイント以上の開きが急速になくなって「46.4%→95%」になったということは考えにくい。いや、あり得ない。普及率の伸びが総務省の調査と同程度と仮定すると、荒川区の普及率は7割ちょっとしかないことになる。

■「地デジカー」が通る区内
そのせいかどうか、最近、区内で総務省の宣伝カーを見ることが増えた。例のキャラクター「地デジカ」をあしらった自動車(地デジカー?)で、「7月24日で……」という音声案内を流しながら走っている。区内の普及率の低さを知っての対応なのだろうか。それとも、都内全域での平等な対応なのか……。

荒川区の調査時点から大幅な地デジ普及がなされていない限り、東京都内でさえ深刻な事態になる。杞憂であれば幸いだが……。

第34回荒川区政世論調査結果

大島克彦@katsuosh[digi2(デジ通)]

digi2は「デジタル通」の略です。現在のデジタル機器は使いこなしが難しくなっています。
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