意外に知られていないことだが、携帯電話で視聴できる「ワンセグ放送」は地上デジタル放送と同じ、デジタル放送の一つである。東日本大震災の際には、被災地への情報伝達で便利な面もあったが、全国的に実用レベルに達しているかというと、大都市以外ではそうでもないのが困ったところだ。ワンセグの課題は何だろうか。


■東日本大震災で活躍
東日本大震災の発生直後、東北の広範な地域で停電が起きた。当然、テレビは見られない。私が聞いたところでは、津波が押し寄せているという情報は、警報が流れた沿岸部以外では伝わらないこともあったようだ。

ここで活躍したのが、ワンセグ放送である。むろん、充電が効かない環境下だから、視聴時間には限りがあったようだが、仙台市内に住む私の知人(会社員)はワンセグ放送で津波の襲来を知り、沿岸部に住む顧客の安否確認にすばやく取りかかれたという。

■ワンセグの困った点
ワンセグは地上デジタル放送電波の一部を使って放送しているため、基本的には地デジ放送の受信エリア内であれば視聴できることになっている。携帯電話(通話)とは電波の仕組みが違うので、電話が「圏外」であっても視聴できることがある。もっとも、全体としては携帯電話のサポートするエリアの方が広いのだが。

問題は、とくに地方へ行くと、都市部でも受信できないところがあることだ。私が某地方都市で体験したことだが、幹線道路沿いの建物で、しかもワンセグが受信しやすい高層階であっても、まったく写らないことがあった。新幹線が発着する駅から、わずか徒歩10分程度のところなのに、である。

しかも、受信具合が受信機によって大きく異なるのは問題だ。ある受信機では、数十センチ窓際から動かしただけでブロックノイズがあらわれたり受信できなくなるのに対し、別の受信機ではちゃんと写ったりする。一般にデジタル放送が受信しにくくなる雨天時になると、なおさら差が出る。写っていても、デジタル放送らしい鮮明な画像を得られることは、そう多くない。

■ワンセグの課題は…
以上の点から、ワンセグ放送を楽しむには、大都市、高層階、窓際、最新の受信機などの条件が揃ってこそ、十分に楽しめるものと言える。

放送されているコンテンツの問題もある。ワンセグが画面サイズが小さいため、字幕版の映画を見ることはほぼ不可能に近い。プロ野球やサッカーなどの途中経過を帰宅途中に見る、という程度なら差し支えはないだろうが。しかも、放送されているコンテンツはほとんど地上波と同じで、携帯端末向けに適したコンテンツの普及はこれからだ。

アナログ停波は来月に迫っている。ワンセグ放送にも、新たな展開がほしいところだ。


大島克彦@katsuosh[digi2(デジ通)]

digi2は「デジタル通」の略です。現在のデジタル機器は使いこなしが難しくなっています。
皆さんがデジタル機器の「通」に近づくための情報を、皆さんよりすこし通な執筆陣が提供します。

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