【戸塚啓コラム】タレント揃いも、楽観視はできない
東北関東大震災の影響で、日本国内はスポーツを行なう環境を取り戻せていない。ひとまず３月いっぱいのリーグ戦が中止されたことで、活動を停止しているＪクラブも多い。そうしたなかでアウェイでの強化試合へ踏み切ったのは、U−22日本代表の強化が急がれるからだ。
ロンドン五輪は来年夏の開催だが、五輪は日本にとって国民的イベントだ。いまこの時期の強化が、将来的に被災地の方々をも勇気づけることにつながる。そう考えて、今回の遠征を見守りたいと思う。
18日に発表されたメンバーには、宇佐美（Ｇ大阪）、永井（名古屋）、大迫（鹿島）らが含まれている。権田（ＦＣ東京）、山田直（浦和）、米本（ＦＣ東京）らも招集され、いよいよロンドン世代のタレントが出揃ってきた印象がある。
不安があるとすれば最終ラインだ。
今回の遠征には、８人の選手がＤＦ登録で招集されている。流通経済大学の比嘉を除くと、Ｊリーガーは７人を数える。そのなかで、３月第一週のＪリーグ開幕節に出場したのは、山本（磐田）と酒井（新潟）の二人にとどまった。湘南から清水へ移籍した村松はベンチ入りしたが、濱田、岡本（いずれも浦和）、本田（磐田）、扇原（Ｃ大阪）はベンチにも入っていない。
山本にしても、本職はボランチである。昨シーズンの磐田ではサイドバックとして価値ある働きを見せたものの、スペシャリストではない。所属クラブで最終ラインの一角を担っているのは、酒井ひとりという状況だ。昨秋のアジア大会のメンバーでは、鈴木（新潟）が途中出場を果たしたが、薗田、實藤（いずれも川崎Ｆ）は開幕戦に絡めていなかった。
４年前の北京五輪２次予選の出場メンバーを調べてみると、07年３月14日に行なわれたマレーシアとの第２戦のスタメンは、直前のリーグ戦にほぼ漏れなく出場している。この試合では流通経済大（当時）のＧＫ林彰洋が先発したが、正ＧＫの西川も大分（当時）で定位置を確保していた。
フィジカルコンディションは日々のトレーニングで保てるものの、ゲーム体力や試合感覚は実戦を通して維持・向上される。心身ともに負荷のかかるゲームは、個々の成長に欠かせない。中盤から前線のタレントが所属クラブで定位置をつかんできた一方で、最終ラインの候補者がなかなかゲームに出ることができていない──史上初のアジア大会金メダルからスタートしたものの、このチームの行く末は決して楽観視できない。
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関連情報（BiZ PAGE＋）
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している
