11月24日付日経MJのコラム「ヒットのヒミツ」に紹介された、花王「クイックルワイパー ふわふわキャッチシート」のヒットのワケを深掘りしてみよう。



 記事によれば、掲題の通り同商品は10月末の発売から計画比6割増の売れ行きだという。しかも、従来の商品と比較すると1枚当りの価格が100円と4倍するという。ヒット商品には必ずワケがある。しかも、「高くても売れる」からには深いワケが。そのワケを分析してみよう。

 まず、クイックルワイパーという商品。「クイックル」は花王の住宅用洗剤やお掃除用品のブランドであるが、モップ状の柄と取り替えシートを装着するヘッド部分によって構成された「クイックルワイパー」が1994年に発売された。「くすみのない つややかフローリングへ」との商品のキャッチフレーズが示すように、商品の中核的な価値は「床掃除が簡便にできること」である。毎日掃除機をいちいち出さなくとも、この商品で簡易に代替できるのである。それをどのように実現できるかという実体価値は、腰をかがめて雑巾がけをするような苦労なくモップスタイルででき、しかもシートは使い捨てというラクチンさを実現したのである。
 1994年といえば、91年にバブルが崩壊し、93年に後に「失われた10年」と呼ばれた長期不景気に突入した翌年である。同年にバブルに咲いた最後の徒花・ジュリアナ東京が閉店し、テレビドラマ『家なき子』のセリフ「同情するならカネをくれ」が流行語大賞になるなど、景気の悪化が実感を伴ってきた年である。共働き世帯も年々増加していた。一方、バブルの反動による土地価格の下落もあり首都圏のマンション販売は94年から大量供給時代に入ったといわれている。つまり、カンタンに掃除を済ませたい世帯と、フローリングの住居が増えたというマクロ環境をとらえたヒット商品なのだ。


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