広州アジア大会に出場しているU−21日本代表は、予定どおり準決勝まで勝ち残っている。5試合を終えて14得点無失点は見事だが、決勝トーナメント１回戦はインド、同準々決勝はタイと、いずれも格下が相手だった。02年大会以来の４強進出は、最低限のノルマを果たしたに過ぎない。

23日に行なわれるイランとの準決勝は、タイ戦から中３日で迎える。８日のグループリーグ初戦から、16日間で６試合目だ。対戦相手に恵まれてきたものの、蓄積疲労は相当なものに違いない。

さらに加えて、中東勢との対戦は今大会初だ。イランは身体能力に恵まれ、駆け引きに優れる。難しいゲームになる要素は、いくらでも揃っている。

このチームのコンセプトは、ザッケローニ監督率いる日本代表と同じと言われている。しかし、過去5試合の戦いぶりからは違った印象が浮かび上がる。

タイとの準々決勝のボールタッチ数を調べると、ダブルボランチの一角を担う山村がもっとも多かった。2番目は中盤右サイドの水沼で、山村のパートナーである山口が3番目となっている。

4番目からは最終ラインが並ぶ。左センターバックの薗田、右センターバックの鈴木、右サイドバックの實藤の3人が続き、トップ下の東が7番目で登場する。

ちなみに、ボールタッチ数のトップ3である山村、水沼、山口は、敵陣ではなく自陣でタッチ数を稼いでいる。最終ラインを構成する薗田、鈴木、實藤は言うまでもない。チーム全体として、自陣でのボールタッチ数が多いのである。タイ戦に限ったものではなく、全5試合に共通する傾向だ。

それが悪い、と言うつもりはない。先行するゲーム展開では、無理に攻めなくてもいい。肉体的な消耗を、できるだけ抑える必要もある。ここまで全試合で先制点を奪ってきた日本は、スコアに則したゲーム運びをしてきたと考えられる。

4−2−3−1の「３の右」を定位置とする水沼が、自陣でより多くボールに触れているのも、彼の献身さを表わしているだろう。水沼だけでなく山崎、東、永井の攻撃陣は、攻から守への切り替えで素早いプレスバックを心がけている。

暑さや湿度と向き合い、グラウンドコンディションも良くない中東や東南アジアでは、ショートパスをリズム良くつないでいく戦い方は必ずしも環境にマッチしない。来るべき五輪予選を想定した際に、今大会のような現実的な戦い方は用意しておくべきである。

最終ライン中央へ下がってきたボールを鈴木と薗田が両サイドへフィードし、山崎や永井のスピードと突破力で局面を打開するのが、これまでの攻撃パターンのひとつとなっている。パスの出どころとなる両センターバックへのプレッシャーはさほど厳しいものでなく、受け手側もある程度の時間とスペースを持つことができていた。

若年層の日本代表を見ていると、日本サッカー全体が掲げるコンセプトに執着するあまりに、自らを追い詰めてしまうようなゲームが少なくない。内向きな満足感が追求され、勝負の本質が見落とされているのだ。

アジア大会のような短期決戦を勝ち抜くには、自分たちの良さを発揮することと並行しながら、ときには割り切ったプレーの選択も必要となる。このチームが４強まで勝ち上がってきたのも、連戦を乗り切るための現実的な戦い方をしてきたからだ。

高さと強さを兼備するイラン相手に、最終ラインからのロングフィードは有効な打開策となりうるか。準決勝のひとつ目のポイントである。二つ目はセカンドボールの支配率だ。蹴り合いが招く間延びした展開では、数的優位を保つのは難しい。フィジカルでまさるイランの特徴が際立つ。日本の良さは出しにくい。

これまで有効だったゲーム運びを封じられた際に、どこまで応用力を働かせられるか。相手が嫌がることを、どれぐらいできるのか。技術や戦術を突きつめれば勝てたのは、準々決勝までである。ここから先は、よりシビアな戦いが待ち受けている。

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