/競争的予算集中配分とやらで、プロジェクトの仕分けが行われるが、こうなると、予算を取ること自体が自己目的化し、実績化して、成果よりもむしろ予算消化が業務の中心となってしまう。/

 この教授、たった一人で五年間に1億数千万円もの研究予算をみごとに使い切った。数百台ものノートパソコンを、全部、自宅に持ち帰って、電子レンジで加熱したり、冷蔵庫で冷凍したりして耐久性を調べ、その後、みな捨てた、と言う。ところが、製造番号を追跡したら、別の人たちがきちんとユーザー登録している。ようするに、こいつは、大学で買った大量のパソコンを、新古品として売っぱらい、まるまる公金を着服していただけ。

 その一方、ある大学のある研究室は、夜な夜な教授が院生や学生たちを引き連れ、街に繰り出しては、公園のゴミ箱からカップ酒のガラスビンを拾い集めている。予算が無くて、実験用のビーカーが買えないのだ。高額の大型実験機器を使わせてもらうために拠点大学を訪れ、若造どもに面と向かって嫌味を言われている哀れな地方教授もいる。

 どうしてこんな異常なことが起こっているか、というと、近年の競争的予算集中配分というやつだ。集中してしまうなら、配分ではなかろう、と思うのだが、ずるいやつは、いつもうまいことを言う。財政削減で総予算が厳しくなってきたために、研究を仕分けして、将来性のあるものだけに資金を集中させよう、と言うのだが、ようするに、特定の大学、特定の教授たちだけで予算を総取り山分けして、むしろ焼け太ろうという魂胆。その一方、その他の大学のふつうの教員は、日々の研究にも事欠くほど貧窮してしまった。


続きはこちら