【戸塚啓コラム】あと一歩足りなかった本田の決定機
試合後の選手たちは、２試合を通じて得た手応えを口にしていた。３連敗を免れた安堵感が先行しなかったのは、新チームが順調なスタートを切ったことをうかがわせる。
センターバックのパス受け回数は、バックパスの多さを表わす。その瞬間に相手守備陣は押し上げることができ、日本のアタッカー陣は自陣へ押し戻される。相手ゴールから遠ざけられてしまう。ボール支配率こそ高いものの、アタッキングゾーンになかなか侵入できていない状況が生まれる。岡田前監督のチームで、しばしば見受けられた試合展開である。
韓国戦は違った。パス受け回数の上位３人は、長谷部、遠藤、本田の順に並ぶ。さらに松井、香川と続く。今野はチームで６番目、栗原は同９番目である。最終ラインだけでなく、前線にもボールが供給されていたことが分かるだろう。
気になったのはシュートを放った位置（シュートポジション）だ。韓国戦の日本は７本のシュートを記録しているが、ペナルティエリア内からは1本だけだった。76分の松井の一撃だ。79分の長谷部の決定機も、後半終了間際の本田の左足シュートも、ペナルティエリアのわずかに手前なのである。エリア内には侵入できていない。
南アフリカＷ杯の得点の77パーセントは、ペナルティエリア内から生まれていた。そこから１メートルでも外へ押し出されると、それだけで得点の確率は低くなる。シュートをブロックできないまでも、ＤＦはコースを限定しやすくなる。ＧＫはコースを予測しやすくなる。
88分の本田の決定機には、彼の素晴らしさが凝縮されていた。相手ボランチからボールを奪い、そのままの勢いでフィニッシュへ持ち込んだ。後半終了間際の時間帯に、ここまで力強いプレーができるのは素晴らしい。見事な推進力である。
ただ、世界のトップクラスにはあと一歩が足りない。あのシーンでペナルティエリアまで入り込むことができれば、ゴールの確率はさらに高まっていたと思う。ほんのわずかではあるが、あと一歩を突きつめてほしいのだ。
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関連情報（BiZ PAGE＋）
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している
