売りものではない趣味を取り戻そう/純丘曜彰 教授博士
/ちかごろは、趣味までカネで買うものになってしまった。しかし、趣味や時間は、もともと自分のもの。わざわざ人に安く売り渡し、カネで高く買い戻すのは、どうかしている。結果を急がず、過程を楽しむ自分自身のための趣味を取り戻そう。/
家にいくつかボトルシップがある。ガラスビンの中に、そのビンの口よりもはるかに大きな船の模型が入っているのだ。戦前、祖父がシンガポールに勤務していたころ、知人の船員がくれたとか。かなり古いが、蓋が密閉されているため、そのビンの中だけ時間が止まっている。それにしても、どうやって中に入れたのか。もちろん、ガラスビンには傷ひとつない。まるで手品のようだ。聞くところだと、長い航海で時間の有り余る船乗りたちの趣味だそうだ。船にある素材だけを使って、自分で小さな部品を切り出し、削り出し、先に糸をしこんで、ビンの口から入れた後に、それを引いて各部を立ち上げる。後は長いピンセットで、細かな部品をひとつひとつ、気長に接着していくらしい。
ちかごろ、ホビーと言うと、売りものだらけ。ただひたすら買い集めるのが趣味であるかのように勘違いしている。絶版の鉄道模型やプラモデルなどがオークションで何万円にもなる。釣りでも、海や川に出ているより、道具屋にいる時間の方が長い。パズルも、新しいのを次々と買ってくるだけ。油彩ですら、てっとり早くうまく描けるように、キャンバスに枠線と色番号が印刷された塗り絵が商品として出ている。ましてまったくどうでもいい紙っぺらのキャラクターカードなど、あんなものを法外な高額で子供たちに売りつけて稼ぐ大人も頭がどうかしている。
続きはこちら
家にいくつかボトルシップがある。ガラスビンの中に、そのビンの口よりもはるかに大きな船の模型が入っているのだ。戦前、祖父がシンガポールに勤務していたころ、知人の船員がくれたとか。かなり古いが、蓋が密閉されているため、そのビンの中だけ時間が止まっている。それにしても、どうやって中に入れたのか。もちろん、ガラスビンには傷ひとつない。まるで手品のようだ。聞くところだと、長い航海で時間の有り余る船乗りたちの趣味だそうだ。船にある素材だけを使って、自分で小さな部品を切り出し、削り出し、先に糸をしこんで、ビンの口から入れた後に、それを引いて各部を立ち上げる。後は長いピンセットで、細かな部品をひとつひとつ、気長に接着していくらしい。
続きはこちら